目当ての君を欲望のままに

4/5
121人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
俺の後に続き、彼女が風呂に入る。 その間、俺はヤルことで頭がいっぱいだった。 大胆にも誘ってきたのだ。 相手もそれなりに経験はあるのだろう。 ゴムも今日のために、多めに用意していた甲斐があった。 災難な日だと思っていたが、案外そうでもなかったらしい。 スムーズに行くよう、予めゴムを取り出しておこうと思い、自分の鞄に手を伸ばす。 その時、たまたま開いていた彼女の鞄の中身が目に入ってしまう。 鞄の中は部屋同様、綺麗にまとめられていた。 「まさに女って感じだな…」 つい言葉にしてしまいながらも、人の鞄の中を見るのは何だか罪悪感があったため、慌てて顔を背けようとしたのだが─── 「……は?」 ふと見覚えのある色が視界に入り、今度は大胆に鞄の中を覗いてしまう。 最初にそれを見た時、俺は信じられなかった。 「なんで…」 彼女の鞄の中には、何と俺が落としていたと思っていた財布が入っていたからだ。 咄嗟にそれを手に取って中身を確認する。 間違いない、これは俺の財布だ。 つまり彼女の目的は財布を盗むことなのか? 全く気がつかなかった。 だが容姿の整っている彼女のことだ、男を騙して金を盗む等容易であろう。 実際に俺も盗まれていたのだ。 危うく騙されるところで─── 「あら、見てしまったんですね」 「…っ!?」 あまりにも意識が財布の方に向いていたため、彼女の声がするまでその存在に気がつかなかった。 「こ、れは…一体」 「まさか鞄の中を見られるだなんて。不覚です」 その時、ふと違和感を抱いた。 財布を盗むことが目的であるならば、どうして彼女は俺を家にあげたのだろうと。 普通なら盗めて終わりのはず。 何故バレるリスクの高いことをわざわざしたのだ。 彼女のことが全く読めない。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!