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俺の後に続き、彼女が風呂に入る。
その間、俺はヤルことで頭がいっぱいだった。
大胆にも誘ってきたのだ。
相手もそれなりに経験はあるのだろう。
ゴムも今日のために、多めに用意していた甲斐があった。
災難な日だと思っていたが、案外そうでもなかったらしい。
スムーズに行くよう、予めゴムを取り出しておこうと思い、自分の鞄に手を伸ばす。
その時、たまたま開いていた彼女の鞄の中身が目に入ってしまう。
鞄の中は部屋同様、綺麗にまとめられていた。
「まさに女って感じだな…」
つい言葉にしてしまいながらも、人の鞄の中を見るのは何だか罪悪感があったため、慌てて顔を背けようとしたのだが───
「……は?」
ふと見覚えのある色が視界に入り、今度は大胆に鞄の中を覗いてしまう。
最初にそれを見た時、俺は信じられなかった。
「なんで…」
彼女の鞄の中には、何と俺が落としていたと思っていた財布が入っていたからだ。
咄嗟にそれを手に取って中身を確認する。
間違いない、これは俺の財布だ。
つまり彼女の目的は財布を盗むことなのか?
全く気がつかなかった。
だが容姿の整っている彼女のことだ、男を騙して金を盗む等容易であろう。
実際に俺も盗まれていたのだ。
危うく騙されるところで───
「あら、見てしまったんですね」
「…っ!?」
あまりにも意識が財布の方に向いていたため、彼女の声がするまでその存在に気がつかなかった。
「こ、れは…一体」
「まさか鞄の中を見られるだなんて。不覚です」
その時、ふと違和感を抱いた。
財布を盗むことが目的であるならば、どうして彼女は俺を家にあげたのだろうと。
普通なら盗めて終わりのはず。
何故バレるリスクの高いことをわざわざしたのだ。
彼女のことが全く読めない。
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