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人生最大の失態を犯してしまった。
「ここのお店、すごく素敵な内装ですね」
「あ、ああ…ぜひ君と来たいと思ったんだ」
合コンで出会った彼女に惚れた俺は、食事へと誘うことに成功した。
別の日に改めてということで、俺は彼女を高級なレストランに連れて来たのである。
予約もしているし、彼女に喜んでもらうためならいくらでも払う。
そう張り切っていたというのに───
先ほど、財布を落としていることに気がついた。
どれだけ鞄の中を探しても見つからないのだ。
ここに来る前は確かにあった。
思い出せ、自分。
レストランまで来た経緯を早く。
そのことで頭が一杯になった俺は、彼女と話すことすら忘れ、料理の味もよくわからなかった。
きっと彼女はつまらなかったと思う。
そして心当たりすらないまま、ついにデザートが運ばれて来てしまう。
このままではレストラン代を払うお金がない。
とんでもない恥を彼女の前でかくことになる。
一切躊躇うことなくレストラン代を払い、カッコつけたところでBARに行き、酔ったところでホテルへ…という欲丸出しのデートプランを考えていたため、その罰が下ったのだろうか。
それでもこのような恥をかくだなんて、黒歴史もいいところだ。
そうだ、今からトイレに行くフリをして近くの銀行に…って、財布にカードがあるのだからそもそもお金を下ろせない。
「正樹さん?
どうかしましたか?」
俺の異変に気づいた彼女が心配そうに見つめてくる。
薄化粧の彼女は素材が良いため、華やかで美しかった。
合コンでも多くの男が狙っていたはずの彼女は、何と俺を選んでくれたのである。
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