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1. 幸せな日常
麻希は、七歳の一人っ子。父と母の三人暮らし。最近、一家は念願のマイホームを手に入れて、前途洋々な日々を過ごしていた。
「行ってきます」
小学校に上がったばかりの麻希は、朝食を食べたあと、上機嫌で学校に出掛けていく。新しい家ばかりが並んだ住宅街が通学路だ。出掛けた瞬間から、家に帰って来るのが楽しみだ。
「今日は帰ったら、お父さんもお母さんもいる♪」
サービス業で働いている父と母は、週末の土日は仕事に行かないといけないが、火曜日は二人とも定休日でお休みなのだ。
学校から帰って来たら、二人ともいた。父はダイニングのテーブルで新聞を読んでおり、母はキッチンで洗い物をしていた。麻希が帰ってくると、母は「あら、おかえり」と言って、おやつを出してくれた。おやつを食べた後は、おもちゃ箱から、ぬいぐるみを出して遊んだ。かわいい顔のドラゴンのぬいぐるみ、角が付いたモンスターのぬいぐるみ、目が大きいカエルのぬいぐるみ。この三匹を思い付くままに話をさせたり、ままごとさせたりするのが、大好きなのだ。
「今日はレストランに行こうか?」
母の声に、麻希は「行く、行く!」と即答して、外食が決まった。
夕食から帰ってきて、父とお風呂に入ったあと、少しテレビを見てから、布団に入った。布団に入ったとき「今日は楽しくて充実した日だったな」と思った。
こんな幸せな日常をくつがえす出来事が起こったのは、その夜だった。
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