この世界に生まれ落ちたからには

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 15時になった。終わらせたかった仕事が宙ぶらりんのまま、上司に事務所を追い出される。  人の少ない電車の中で、適度な距離を意識して吊革や手すりも持たずに立つ。  帰って残った仕事をやらなければならない。  早く家に帰れるというのにどうしてこうも気が重くなるのか、よくわからなかった。  わからないからこそ、余計に気が重くなるのかもしれない。  マスクの中で息が籠る。咳払いをしたくなったが、我慢した。今はくしゃみや咳などしようものなら戦犯を見るような視線を送られる。  嫌な世の中になったものだ。  流れる穏やかな春の景色を見つめる。  心地よい揺れに眠気を誘われながら、温かな陽の光が鼻をくすぐる。  こんなに世界は美しいのに。  眠気を感じ、目を瞑った。温かな日差しが、気持ち良かった。
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