この世界に生まれ落ちたからには

5/17
前へ
/17ページ
次へ
 仕事が2番目以降になると、残業が嫌になった。 「早く帰って、夕食の準備をしたい」と考えるようになったからだ。それはお腹が空いたからではなく、夫との時間を大切にしたいと思う気持ちの表れだった。  けれどそう思ったから仕事量が減る、なんてことはなく、私の受け持つ部門の売上が前年実績を下回り続けていた為、必然的に今後の新製品にかけられる期待は大きくなった。  営業との打ち合わせ(私の会社は営業部門が2つに分かれていて、それぞれの意向を聞いて規格を考える。あっちがだめだと言うとやり直して、やり直した規格をまたもう一方の部門の人に確認をとりに行く。全員集合させて会議を開けば一度で済むのにそうしない。面倒さ2倍だ)  市場分析の為の商品買付(1日数万歩歩けるのでダイエットに最適。けれど結局買ってきたものを食べるのでプラマイゼロ、むしろマイ、だ)  何十回と重ねる新商品の試作(研究所の一室を借りてやるが一日中立ち仕事。これもダイエット向き。けれど動いてお腹が減るのでいつもより昼食を多めに食べてしまう。むしろマイ)  早く帰りたい気持ちと仕事量が比例していく毎日だった。    疲労と不満だけが溜まっていった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加