小銭の裏

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 「今回のお手紙はあなた様のような一定の職がなく、どうにか日々を暮らし、プー人間且つ野良犬のための保護政策。国はあなた様に給付金を与えます。」  私は喜んだ。若干貶されたような気がするが、まあそんな小さなことは良かった。これでその日暮らしの生活とはおさらばできる。さよなら、家無しジプシー。  「それで、どのようにお金は頂けるんです?」  「はい。一円が二円に、二円が四円に、四円が八円に増えていきます。」  「つまり?」  「あなた様には一円だけお支払いいただければ良いのです。」  私は疑った。ただ貰うだけじゃだめなのか。言っておくが私は生活困窮故の相当なケチ。払わなくて済むものなら払わずおきたいのが、私の性、いや人間の性。そんな疑念を察してか紳士は続けた。  「なかなか厳しいものがございまして、世間で何か緊急事態が起こっている状況でもないのに、給付金を支給すれば、殺到してしまいます。」  その説明で私は納得した。確かに今ここで無料でもらってしまえば、生活にそこまで困っていない連中まで、つけあがりだすかもしれない。図々しくふてぶてしい奴らが我先に金を得ようと、のさばり出すだろう。そうなれば、給付金どころの騒ぎではない。そもそも政策自体がなくなる可能性もある。
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