夜の会社には何かが出る……

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 エレベーターで52階へ上がり、社長が、玄関を開けて 「どうぞ」 と言ってくれる。私は少し緊張しながら、 「お邪魔します」 と中へ足を踏みれ入れようとして驚いた。  広い玄関。いや、本来なら、この広い玄関に驚くべきなんだけど、私が驚いたのは、すっごく綺麗な玄関のあまりの散らかりよう。靴が10足以上脱ぎっぱなしになってる。  ということは……  上がってみて、想像通りの惨状に言葉を失った。 「社長!!」 私が声を張り上げると、社長はケタケタと笑う。 「なんだ、やっと八代らしくなったな」 「そういう問題じゃないでしょ。  なんですか? この部屋!」 まさかと言うべきか、案の定と言うべきか、社長の部屋は散らかり放題だった。ソファーで寝たのか、毛布は出てるし、6月なのに冬物のコートも脱ぎっ放しだし、空のペットボトルも放置されてる。せめてもの救いは、食べ物がないこと。外食ばかりなのか、コンビニ弁当の空き容器すら見当たらなかった。 「大丈夫だよ。少々散らかってたって  死にやしない」 私は、苛立ちのあまり、腰に手を当てて言う。 「これは、少々とは言いません!  こんな素敵なマンションなんですから、  ハウスキーパーさんをお願いすれば  いいじゃないですか」 すると、社長は事もなげに言った。 「だから、八代! 頼んだ!」 「は?」 「俺、知らないやつを部屋に入れるの  嫌なんだよ。  だから、今日から八代がうちの掃除係な」 「…………  …………はぁぁ!?」 いやいや、意味分かんない。 「住み込みで、給料は月10万。  どうだ?」 えっ…… 「それって、会社のお給料とは別でですか?」 高すぎない? 「当たり前だろ?  俺は、ケチじゃないぞ?」 「……それは知ってます」 「お前は、住む所ができて、給料も増える。  俺は、綺麗な部屋に住める。  ウィンウィンな関係だと思わないか?」 「うぅ……  それは確かに」 私が反論できずにいると、 「じゃ、今日からよろしく。  お掃除係の紗世(さよ)さん」 と私の頭を撫でて、歩き出す。 え…… 名前…… 「ほら、紗世の部屋」 案内を始める社長に、私は戸惑いつつも、パタパタとついて行く。 でも…… 住む所はできたけど、なんかとっても大変な竜の巣にでも踏み込んだ気分なんですけど。 だけど、背に腹は変えられない。 私は、昼は総務部で雑用をこなし、夜と週末は社長宅で掃除という雑用をこなす生活へと足を踏み入れた。 神様! 平穏な日常なんて贅沢は望みません。 どうか、嵐だけは起こさないでください。 よろしくお願いいたします! ─── Fin. ─── レビュー・感想 ページコメント 楽しみにしてます。 お気軽に一言呟いてくださいね。
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