嫉妬

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「朝帰りして大丈夫なのか?」 裸のままふたりでベッドに滑り込んで横になる。 「僕、大人だもん。何も言われないよ」 自分の体も洗えないのに何が大人なんだ。 「誰に何を言われるの?」 父親。その答えを導き出すと嫉妬感が湧く。 子どものように体温の高い結城の肌が心地いい。 眠そうな顔でぴたりと体をくっつけてくる。 すぐに規則的な寝息が聞こえてきた。 いつもこんな風に父親と寝ているのか。 考える度にどす黒い感情が心の中に渦を巻いて落ちつかない。 無防備な寝顔を見ながら結城の髪をさわる。 最初に見た時とは違って痛んでいなかった。 何も疑わず、言われたことはする。 父親から離れて俺の所へ来いと言ったら結城はどうするだろうか。 奪い取る自信が、今はない。 どうしてあんなオークションの商品になっているのか。 本当は父親のことをどう思っているのか。 聞いてみたいことはたくさんあったが、気持ちよさそうに眠っている結城を起こすのはかわいそうで、腑に落ちないことも些細な出来事のように感じて目を閉じた。
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