匿名質問箱

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匿名質問箱

あるウイルスに侵され、世界中が自粛ムードになり、学校も休校期間に入っていた。 そんな時、自宅の自部屋で携帯をいじっている高校生の彼の名は神野悠斗。 神野は自他ともに認める生粋のインスタグラマーであった。 そんなある日、彼はインスタグラムで「匿名質問箱」なるものを設置した。 「匿名質問箱」とは、誰でも匿名で質問箱の設置者に質問などを送信できる、というサービスの事だ。 早速、彼の元に質問が送られてきた。 「『彼女いますかー?』か。ふん、いないっての」 神野は『いないよー?』という返信をつけてストーリーズに投稿した。 その後も、くだらない質問や遊びの誘いばかりが送られてきて、全てに答えを返しつつも、心の何処かでは退屈に思っていた。 そんな中、ある一際目立つ文章が神野の元に届く。 『誰かに追いかけられてます。助けて』 (誰かの悪ふざけだな...ならこっちも) そして神野は『誰か分からないけど助けてあげますよ?もし良かったらDM来てください!』と返信した。 すると見知らぬ名前のアカウントからDMが届いた。 神野が、そのアカウントのメッセージに飛ぶと、『助けて!早く来てお願い!』というメッセージが送られてきていた。 見知らぬアカウントからのそのメッセージに少し恐怖を覚えるも、面白そうだと思い、彼女の助けを聞く事にした。 『場所は何処ですか?』 『あの、今あなたの家の近くにいるの!早く外に出て助け』 『どうしたんですか?もしかして、襲われでもしました?笑』 しかしそこから返信は途絶えてしまった。 面白いイタズラをする人もいたもんだと思って神野は何となく、玄関へ向かうことにした。 何の躊躇もなく神野は勢いよく玄関のドアを開けた。 すると、そこには見知らぬ顔の女の、血だらけになった死体があった。 これには神野も驚き、腰を抜かした。 しかし神野は警察に通報することもせず、彼女の持っていたバッグの中身を調べてみることにした。 中には、携帯、財布、鍵、香水などが入っていた。 そして、神野はさっきのメッセージの主がこの女なのか調べる為に彼女の携帯を取り出した。 電源を入れて、パスワードが分からなくて焦っていると、パスワードが自動で入力され、自動でインスタグラムが開かれた。 これを見た神野は怖くなって携帯を投げた。 しかし、すぐに好奇心が戻って神野は携帯を拾って画面を見た。 するとまた自動でインスタの中の神野とのメッセージ画面に飛んだ。 次の瞬間、何も触っていないのに急にキーボードが現れて自動で文字が打たれた。 『なんで助けてくれなかったの』 『助けてって言ったのに』 『なんで笑っていたの?』 『許せない』 『許さない』 『許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない』 すると、画面が急にバリン、と割れた。そして、女の死体の方からバサッ、という音がした。 ゆっくりと振り返ると、誰もいなかった。女の死体も、無かった。 怖くなった神野は体の向きを直した。その時だった。 女の死体が立ち上がり、血だらけになりながらこちらを睨んでいた。 後日、各テレビ局で2人の男女のニュースが報道された。 女の方は何者かに全身を刺され意識不明の重体。神野という姓の家の玄関先で発見された。身元は、鈴村由美(24)。アパレル店員。バックが見つかったが、中身は携帯だけが無かった。 男の方は神野悠斗(17)。高校の駐車場で遺体となって発見された。遺体の状況から、警視庁は屋上からの飛び降り自殺と断定。遺体の右手には鈴村由美のものと思われる携帯が握られていた。 2人とも発見されたのは同時刻。関係があるかは謎であり、その事実は闇に葬り去られた。
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