ケロ子、の新家族

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カジ坊と一緒に案内されたのは、広い大広間。数年前、社員旅行で泊まった旅館の大宴会場を思い出した。七瀬組本家、どんだけの広さなの。 カジ坊の登場を待っていたかのように、30人程の礼服を着た礼儀正しい『むさっ苦しい男共』さん達が立っている。元七瀬組のヤクザさん達だよね。体が強張ってしまうのは仕方ない。 大きなステージ前、上座。立ち止まったカジ坊に『こっち』と位置を指定され隣に立つ。右斜めに遼二会長とその隣に丸子社長。その隣に副社長ドウェインが並び。向かい側左斜めには、南専務と羽柴部長、そして初めて見るこれまたイケメンな男性。どこかで会ったことがあるような、ないような。いや、口説き常套句ではなくて。 専務と同じくらい気怠そうに立ち、メンドクサイって顔をしてるけど、子犬みたいな可愛い顔立ち。両脇がダラっとしてる分、真ん中に挟まれている羽柴部長の姿勢の良さが際立っている。 そして、遅れて大広間に登場したのは、サンタクロース、もとい元七瀬組大親分。 「やっと会えた。大きくなったね、雅さん。」 私の右隣に立ち、ニコリと優しい笑顔で右手を差し出した。 「その節は、大変お世話になりました。」 「恵の父、七瀬重正と申します。以後、お見知りおきを。」 「こちらこそ、宜しくお願い致します。」 大親分さんの手を握って、頭を下げながら握手を交わした後、赤い盃を手渡された。 「これは家族の盃なんだよ。」 そう言いながら、目の前にあるお膳から徳利を取り、私の盃と、カジ坊の盃に注いだ。多分、日本酒だ。それが合図なのか、広間にいる人達が盃を手にしている。 「本城 雅さん。私達はあなたを家族として歓迎する。」 大親分さんが気合の入った声でそう言うと、30人余りの人達が一斉に飲み干すから、私も同じように飲み干した。やっぱり日本酒だ。甘くて美味しい。 「ケロ子、盃。」 左隣のカジ坊に小声で言われ、差し出された手に盃を渡すと、自分の盃に重ねたそれを和紙に包んで懐に仕舞った。
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