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カジ坊が、腕にある時計をチラっと見た。ブランド名はわからないけど高そうな時計。ベルトは黒、ケースはプラチナ、文字盤はダークブルー。素敵な時計だ。とても似合っている。
そんなことよりも、だ。バッグといい、時計といい、カジ坊の私物は紺色が多い。そう、私の瞳の色。偶然かもしれない。自意識過剰だとも思う。だけど、胸が熱くなるのを止められない。私の体の変化を見抜いて、体に優しい食事を用意して待ってくれていたなんて・・・。
「ごちそうさまでした。本当に、ありがとう。」
ランチタイムもそろそろ終わり。たとえ怒られていようとも、このまま一緒にいたい気持ちがふんだんにある。ある意味変態どMな私だけど、わがままを言ってられない。仕事中、話ができただけでも救われた。
「そのままでいいから。」
「ありがとうございます。」
立ち上がって片付けを阻止されたのでドアに向かう。
「終わったら迎えに行く。先に帰るなよ。」
見送ってくれるのか、カジ坊が後ろからついてきた。
「やっぱり、少しくらいは片付けたいので今日も自宅に帰るよ・・。」
本音は一緒にいたい。一人で寝るベッドは寂しい。だけど今日と明日だけの辛抱だと思えば大丈夫。一緒に住めるんだから。
「送って行く。」
「そんな。もう大丈夫だよ。」
「荷物の再確認がてら。」
「・・・ありがとう。嬉しい。」
少しでも長く一緒にいたい。別れ話かも知れないなんて思ってたからこそ余計に。大好きでたまらなくなる。離れるのが嫌になる。
「じゃ、あとでな。」
ドアを開いてくれたカジ坊に、
「・・カジ坊、大好き。」
通りすがりに呟くくらいの小声で言ったはずなのに、
「・・・お前、ここで襲わせたいの?」
聞こえてしまったみたい。聴覚すごい。やっぱりカジ坊色々優秀。
「いえ、あいにく生理ですので。では後程。」
「終わったら死ぬほど可愛がってやるから覚えとけよ。」
あーもう、大好き。どーしよう。すごく好き。
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