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「食器類はどうする?」
「必要ないかな。カジ坊が揃えてくれたものを使いたいし。」
「調理器具、結構揃ってるんだな。」
「最低限のものだけ買ってもらっちゃった。」
「・・誰にだよ。」
「両親。女の子なんだから少しは家事をしなさいって。」
「あっても困らないな。置くスペースはある、持っていこう。」
終業後、リゾート課で待つこと20分。迎えに来てくれたカジ坊の車に乗ってオーガニックレストランで夕飯を済ませた後自宅へ。
「状態は悪くないからリサイクルに回せる。綺麗に使ってたんだな。」
「あ、そうしてくれると嬉しい。もったいない気もしてたから。」
「回収物は一度倉庫に運び込む。売れるものは各業者が買って行く。運ぶのも買い取るのも会社関係。多業種経営の強みをフル活用した上で売れそうもないものは下取りに出す、もしくは寄付。捨てるのは最終手段にしてる。」
「さすがです。無駄なくエコマーク(笑)」
元々、そんなに家具もなければ物も少ない方。業者に託しても、それほど手間は掛からないとのこと。改めてお願いすることにした。
「わざわざありがとう。」
「俺も最終確認ができて良かった。」
あと2日でこの部屋ともサヨナラ。上京して1年間、お世話になった私のお城に、カジ坊が立っているだけで狭く感じる不思議な光景。
「アイスコーヒーでいい? 市販のものだけど・・」
この部屋に人を招き入れたのはカジ坊が初。シャレた飲み物なんてない。賞味期限が2週間くらいの紙パックのアイスコーヒーなのですが・・・。
「・・・・いや、やめておく。」
「え。決して腐ってはないよ!」
まさか、断られるとは思わなかった。
「そうじゃない。」
「これからまだ仕事とか?」
「いや。」
忙しくないと言いながら、玄関に向かって歩くカジ坊を追いかける。
「もう帰っちゃうの?」
やだ。私、必死だ。しかも時計はもう午後9時半過ぎ。浮かれていたのか、時間の経過を忘れてた。今から帰って、シャワーとかしなきゃいけないカジ坊のことを考えたら、引き留めたら悪い。わかってるのに・・。
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