ケロ子、の新生活

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「お前、昨日あまり寝てないだろ。ゆっくり寝た方がいい。」 「どうせ眠れない。」 思わず、口走ってしまった言葉。ハッとして下を向く。 「なぜ。」 嘘じゃない。だけど・・。 「な、なんとなく。」 カジ坊がいないから眠れない、なんて言えない。今日だって私のわがままでここに来てもらったようなものなのに。 「ここで『なんとなく』が通用するとでも?」 玄関先で。まるで喧嘩してるみたいだ。 「なぜ、眠れないのか聞いてる。」 違う。喧嘩じゃない。言わなくちゃ。正直に伝えないと。顔を上げてカジ坊を見る。眼鏡を掛けてないのに厳しい顔。ちょっと怖い。 「カ、カジ坊がいないと」 「・・・・・。」 「・・・淋し・・くて」 か細い声で言った途端 「わっ」 腕を引っ張られて、抱き締められた。
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