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全体重、勢いよく倒れこんだはずなのに、あっさりと受け止めてくれる逞しいカジ坊が、
「心配させるな。」
両肩と頭を包んで、首筋に顔をうずめて呟いた。
「強引なのは承知してる。だから好きなようにさせたってのに体壊したら意味がないだろ。」
カジ坊の匂いだ・・。
「泊って行って欲しいって・・ワガママ言ってもいい・・?」
頬をくっつけ合ったまま言ってみると、
「そういうのはワガママって言わないんだ。」
スッと、カジ坊の体が離れていく。ただそれだけで離れたくないと咄嗟に思ってしまう情けなさ。
その情けない顔を見たカジ坊が、フッといつもの鼻笑い。頭を大きな手で掴んで、左右に揺らす。子供をイイ子イイ子とあやす、あんな感じだ。
「部屋の鍵、貸して。」
「え?」
「車から荷物を取って来る。俺が出て行ったらカギ閉めて。シャワーなり好きなことできるだろ。」
とことん徹底された無駄のない過保護。
「ありがとう、カジ坊。先にシャワーさせてもらうね。好きなことしてていいから。」
「あぁ。」
ほんの数分程度、鍵を開けておくのも許さない警戒心。大げさだなって言っちゃいそうになったけど、黙って従い鍵を渡す。これも大切に想われている証拠。嬉しくてたまらない。
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