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ケロ子、の新家族
「まるでお城みたい・・」
高い壁で囲まれた見るからに頑丈そうな門。自動で開かれた扉の向こうに、カジ坊が運転する車はゆっくり徐行。
「見栄を張ってなんぼの世界だったからな。」
観たことのあるヤクザ映画の親分さんの家も豪華なお屋敷だったけど、それとはまた違う。どこかの武将が建てたお城のような建物。さすが元ヤクザの大親分さんの自宅と言えど、
「サンタクロースとのギャップがすごい(笑)」
「そこはスルーしてやれよ(笑)」
数人の黒いスーツの男性が立つ玄関らしき場所に車を停めた途端に開かれたドア。
『ようこそ、雅様。』
「あ、ありがとうございます・・」
しっかり45度に頭を下げられ、上品なお出迎え。『様』呼びなんて、何だかむず痒い。これがここの常識なんだろうか。文句は言えない。
『ご苦労様です。』
「明日まで世話になる。頼むなサトル。」
『離れをご用意しておきました。』
「ありがたい。案内はいい。」
45度で頭を下げる、とても元ヤクザに見えない人達の一人に私のキャリーバッグを渡したカジ坊に腰を押されながら建物内に入る。まるで高級旅館の玄関。履物ひとつない綺麗な空間。脱いだ靴を置くのも気が引ける。
「靴は・・」
「そのままでいいから。」
「はい。」
暖かいオレンジ色のLEDライト。大きくて立派な生け花が迎えてくれる。エントランスを抜ければ、2階までの吹き抜け。中央にこれまた立派な日本庭園。庭園を囲むように部屋が設置されている。
「す・・ごい・・」
この言葉しか出てこない。襖が開いている部屋が廊下から見える。パソコンデスクが並べられたオフィスのような部屋があれば、応接室のような部屋もある。道場みたいな畳の部屋もあれば、スポーツジムにある機械が並べられた部屋もある。
宴会場なのか。お酒やお料理を運んでいるのか、慌ただしく人が出入りし、宴会の準備がされているようだ。しかも男の人ばかり。高級旅館さながらの佇まいなのに、女性の姿が見られないのは、昔ながらの風習なのかな。
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