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「まだ約束の時間まで一時間程ある。横になってて構わない。」
「いやいや。スーツ皺になるし。」
「脱げばいいだろ。」
「やらしい!」
何言ってんだよって呟いて、フッと笑うカジ坊だけど。これから親分さんに会うって言うのに、昼寝なんてしてられない。
畳の香りが心地よい和室とベッドが二台ある和洋室。くつろぎ考慮の空間なんだろうけど、ベッドに腰を下ろしてみるものの、やっぱりなんだか落ち着かない。
「水、飲む?」
「あ、ありがとう!」
備え付けられた冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを出したカジ坊の元へササッと近づくと、
「座ってろよ。」
「落ち着かない!」
また鼻で笑われた。
「近々、山梨に行く。」
「え。」
隣に腰を下ろしたカジ坊が言う。
「今日ここに、本城夫妻を呼ぶ訳にもいかなかったからな。」
「どうだろ。もうヤクザじゃないんだし、大丈夫なんじゃないかな。」
「まさか、話してないのか?引っ越したこととか、こうなったこと色々。」
「うん。落ち着いたらでいいかなって。」
呆れたって顔で見られちゃったけど。
「来週末、ご挨拶に行くからアポイント取っておくように。」
「籍入れるんじゃないんだし、そんなに急がなくても。」
「心配してるだろ普通に。きちんとしておきたいから言うこと聞け。」
「はーい。」
フッと笑うカジ坊。ほんとこの人、律儀なんだから(笑)
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