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「じゃ、おじいちゃんのところに戻るね。お邪魔しました。コイちゃん行くよ。」
「またな。」
カジ坊が降ろした小粋ちゃんの手を取って歩き出す亮くん。小粋ちゃんはバイバイのジェスチャーをしながら亮くんに従う。
「めちゃめちゃイイ子!めちゃめちゃ可愛い!!」
「このまま母親に似ず育ってくれればと願うばかりだ。」
「えー。私、丸子社長推しなんだけど。」
ジロリと睨まれてしまった。盛大なため息を吐きながらベッドの上にあるペットボトルを持ったカジ坊だけど、心底、丸子社長を嫌ってるようには思えない。
「予想はついてると思うが、亮は養子。」
「うん。」
「虐待されていた亮を、当時警官だった丸子氏が保護し引き取った。」
カジ坊の隣に座って、手渡されたミネラルウォーターを飲む。
「・・そっか。私達と、同じ、なんだね・・・。」
なんとなく重くなってしまった空気。思い出したくない記憶。亮くんもきっと、消えない傷を抱えてるのかもしれない。
「元気そうで・・幸せそうで、良かった。」
「あぁ。」
それでもあんなに元気そうに笑ってる。救いだ。
「幾度となく面倒事を持ち込みまくり、うんざりする程振り回されたが・・」
丸子社長の話になると、必ずと言って不機嫌になるカジ坊だけど。
「あの見上げたバカさ加減が、なぜか憎めない。」
笑ってくれると、私も心が温かくなる。
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