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「でも『Aランク』の民だけは除外だろ。国王だって今日自分の子供が生まれたらしいが、『大陸』行きにはならん訳だ。それってやっぱズルいよな......
男の子は生まれてすぐ『男大陸』行き、女の子は生まれてすぐ『女大陸』行き。
男も女も、互いに触れ合えないどころか、存在すら知らないまま生涯を終える訳だ。そりゃ確かに人口は増えんからいいけど、間違いなく『生き地獄』だよな」
「そうか? 互いの存在を知ってれば確かに『生き地獄』かも知れないけど、知らない訳なんだから、それはそれでまた別の幸せを見付けるんじゃないか?
まぁ、俺はただの役人だ。『大陸』に行った事も無い訳だから、大きな事は言えんけどな」
「そんなもんかね......」
「そんなもんさ、はい!」
役人は書類に必要事項を全て書き込むと、パン、パン。2箇所判子を押した。これで引き取り手続きは全て完了。抜かりは無い。
「じゃあ赤ん坊の事、宜しく頼むな」
「ああ......寂しいわ。あたしの赤ちゃん」
生まれて間もない大事な赤子を、涙涙......悲しみに暮れながらも、従順に引き渡す善良なる『Bランク』夫婦? だった。
ソニア王妃め、ざまぁみろ! お前の腹を痛めた息子は、今から一生『男大陸』住まいだ。フッ、フッ、フッ......
などと、ベーラなる偽母親が心の中でホクソ笑んでる事など、役人は勿論知るよしも無い。もしこれが国王の息子である事を知ったら、きっとド肝を抜くだろう。正に『知らぬが仏』......それ以外に言いようが無かった。
なんだか......
やたらと長い話だったな。さっぱり内容は分からんかったけど、悲しんでるところを見ると、悲しい事が起きているに違いない。だったら知らない方がいいって事だ。無駄な詮索をするのは止めとこう......
ただ、生まれたばかりの俺でも、一つだけ分かった事がある。それは、これから『男大陸』なる場所へ連れてかれるって事だ。
どうやら『大陸』は美味しい食べ物じゃ無かったらしい。また一つ頭が良くなったぞ。これからも色んな事を学んで立派な人間になるとしよう。なんせ俺は、この『ゴーレム国』の王になる身なんだから......
実はこっちの方がよっぽど『知らぬが仏』であった事は言うまでも無い。もっとも、知ったところで「フギャー!」と「ムムム......」しか言えない訳だから、不満を述べる術も無い。まな板の鯉たるアダムは、ただ料理されるのを、じっと待つ事くらいしか出来なかった。
やがて俺は、
ユラリ、ユラリ......
『仕分け場』なる場所へと連れてかれた。
オギャー!......
オギャー!......
オギャー!......
オギャー!......
なんだ......俺とおんなじような輩がいっぱい居るじゃないか。まるで『挨拶』の大合唱だな......おっと、作業員が仕事を始めたみたいだぞ。
「はい......こいつはどこ行きだ? え~と......」
役人が記入した『手配書』を眠気眼で見詰めながら、
「『女大陸』だ。おっと! 中々の美人だぞ」
『了解!』
「そんで、こいつは......え~と......『男大陸』!」
『了解!』
おいおい......1人で何個も篭を担ぎ持ってるじゃんか。メモも取らないで全部行き先覚えてるんだからこの人達は流石だ。俺も大きくなったら、こんな人達みたいにならなくては! 人生勉強、勉強だ!
「そんでもって、こいつは......」
おお......遂に俺の番が来たぞ!
「女みたいな顔してるけど、『男大陸』だ!」
よしっ、『男大陸』への旅立ちだ! なんか、無性にワクワクして来たぞ!
「エッホ、エッホ......」
目の下に『クマ』を作った運び人は国法で仕事中に歩く事を禁じられている。一応そんな運び人も、国家公務員の端くれであるが故に、法を破る訳にもいかなかった。最近は税金を納めている有権者が煩くてどうにもならない。
んな訳で、例えどんなに身体が消耗仕切っていても、どんなに脳が疲労しまくっていても......走る事しか許されない末端公務員衆。今宵も、見た目だけは元気に走り出して行くその者達だった。
そんなオーバーワークを課せられてる訳だから、当然の如く悲劇は巻き起こる。
フラフラフラ......
「おっとっと! 足が縺れたぞ!」
そして、
バタンッ!
ぶちまけてしまった。3人の赤子を。
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