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分岐点
町を歩いている時、一人の少女に出会った。
少女はとりたてて可愛らしいわけではなかったが、とても悲しそうな顔をしていたので目を引いた。
口を結び、泣きそうな目でうつむき、トボトボと歩いている少女を見て、思わず声を掛けていた。
「どうしたの?」
すると、少女は少し驚いたように顔を上げた。
目は真っ赤に充血し、まつ毛は濡れていた。
ずっと泣いていたんだな、と思った。
「いやなことが、あったの……。」
少女は目からこぼれてきた涙を乱暴に拭って、濡れた声で言った。
「そうなんだ。悲しかったね。」
「うん。」
少女は自分より少し年下なだけに見えた。
幼稚園児のようにとても幼いわけではなくて、それでもうなだれたその体はとても小さく儚く思えた。
「何があったの?」
少し踏み込みすぎたかなとも思ったが、今にも消えてしまいそうな少女を少しでも慰めてあげたかった。
「パパとママが、ひどいこと言ったの……。」
「そう、それは嫌だね。それで出てきたの?」
「うん。もう帰んないの。」
「謝ってもらえた?」
「ううん……。」
「嫌だね、ちゃんと謝ってもらいたいね。」
「うん。」
少女の声がだんだんか細くなっていくので、慰めようとして反対のことをしているのではないかと、だんだん不安になってきた。
「そうだ、いいもの見せてあげようか。」
「いいもの……?」
「おいで。」
少女を連れて公園に向かう。
公園の隅の茂みの中を探った。
今まで誰にも見せたことのないものだった。
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