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「ほら、これだよ。」
「うわあ!」
寂しそうだった少女の目が一瞬で輝いた。
「すごーい!」
少女の目をくぎ付けにしたそれは、たくさんの種類があった。
例えば、外側を紙で覆われたペットボトル。
紙にはところどころ穴が開いていて、ペットボトルの中のビー玉やスパンコールの光が漏れ出していた。
空き箱で作ったロボットもある。
動きはしないが、本物そっくりに作れた自信作だ。
その他にもいろいろな物が顔をそろえていた。
「全部僕が作ったんだよ。」
「すごーい!これとか、一番いいね!」
女の子が猫の置物を手に取った。
ペットボトルなどプラスチックで出来た猫は、目の部分に黒いボタンが貼りつけられて愛くるしい顔をしていた。
また背中の部分に切れ目があり、そこを開いて中に物を入れられるようになっていたり、針金の取っ手がついているなどバッグにもなりそうだった。
「おお、お目が高い!それは____。」
「ここにいたのね!」
突然、大声が空気を震わせた。
「マ、ママ!」
女の子は慌てて手に持っていた猫を元の位置に戻す。
母親らしい女性は泣きそうな目で走ってきて、少女を抱きしめた。
「よかった、心配したんだから!ごめんね、ひどいこと言っちゃって。パパも心配してるしごめんねって言ってるから、ほら、帰ろう?」
「パパも……?」
「後でよく考えたけど、やっぱりママが悪かったわ。一緒に帰ろう、帰りに好きな物買ってあげる。」
「ほんとっ!?」
女の子の顔がパッと輝いた。
「アイス食べたい!」
「そう、アイス食べたいの?……あら。あなたは誰?」
「あっ、えっと。その子が……。」
「私が泣いてたら、すごくいいもの見せてくれたの!」
「そうなの?どうもありがとう。」
「いやぁ。」
「ありがとう、バイバイ優しいお兄ちゃん!」
そう言って笑顔を向けてくる女の子だったが、まだ猫を見つめていた。
「気に入ったなら、あげるよ。もともと目的があって作ったわけじゃないから。」
「本当!?ありがとう!」
その視線に気づいて提案すると、少女は嬉しそうに猫を手に取る。
「それ、好きなの?」
「うん!猫も好きだし、バッグも好きだもん。」
「よかった。」
少女の後ろで、母親も微笑んでいた。
「じゃあね____。」
少女が笑顔を向けながら母親と去っていく様子を見て、あ、と小さく声を洩らす。
「どうかしたの?」
「……ううん、大したことじゃないんだけど、____もしよかったら、君の名前教えてくれない?」
少女はすぐに答えてくれた。
「あのね、私の名前は……。」
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