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「どうしてですか?」
「この本のページ数を見ればわかるよ。ほら」
そう言って理人は千代子に本のページを見せてきた。千代子が見ると、そのページは240ページだった。残りのページ数から考えて、クライマックスの場面だろう。そして理人が読んでいる本は推理小説である。
「つまり、今まさに探偵が自らの推理を披露している場面なんだ。そんな場面を最後まで読まずに寝るような酷なことは僕にはできないね」
呆れるほどの推理小説好きである。
その感情が特に今まで趣味を持ったことのない千代子には理解し難いものであった。
自分も何かを好きになればこの感情を理解できるのだろうか。
いや、今はそんなことを気にしている場合ではない。
一刻も早く理人を寝かせ、自分も寝なければいけないのだ。
「理人さん、貴方が寝なければ私も寝られないんですよ。それに旦那さまになんて言われるか…」
千代子がそう言うと、理人はうーんとうなって、
「分かったよ、これ以上意地を張っても、千代子さんのクビに繋がりそうだ。部屋の電気を消して机の明かりで続きを読むことにするよ」
問題の根本的な解決には全く繋がっていない方法を理人は提示した。
だが、千代子もこれ以上の言い争いをしていても、問題の解決に繋がらないと感じ、それでいいと思ってしまった。
「あーもう、分かりましたよ、それでいいです、それで。でもできるだけ早く寝てくださいねー」
そんな投げやりな返事をして、自分の部屋に戻るために部屋のドアノブに手をかけた。
しかし、
「あれ?」
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