1 平凡な朝

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1 平凡な朝

その町の名は真条町(しんじょうちょう)と言った。 名前だけ見るとはるか昔からある伝統を重んじる古き良き町、といった印象を受けるかもしれない。 しかし、それは名ばかりで、実態は伝統文化もなければ、観光客が大勢押し寄せて来るわけでもない。 かといって町の人口の大半がお年寄りである過疎地域でもない。要するに日本のどこにでもあるようなごく普通の町である。 そんなごく普通の町に住む一人の高校生である僕、赤月尚也(あかつき なおや)は目覚まし時計が鳴っているにも関わらず、ベッドの上でグーグーと寝息を立てていた。 いつもなら起きないといけないが、今日は朝課外が無い日なので、こうして呑気に眠っていられるのである。 あと20分くらい寝たら起きよう… そう思っていた僕の顔に突如物凄い勢いのストレートパンチが炸裂した。 「うげぇっ」と呻き声をあげて目を覚ますと、ストレートパンチの主である母が仁王立ちで立っていた。 「あんた、いつまで寝てるの!学校に遅刻しても知らないわよ!」 「遅刻って、今は7時くらいでしょ。昨日朝課外はないって言ってたでしょ」 「確かに言ってたわね。でもそれ込みで学校が始まる時間は?」 「えっと…8時半」 「じゃあ、これ」 そう言って母さんは目覚まし時計を僕の目の前に見せてきた。その顔は悪い笑顔…嫌な予感しかしない… 「何時でしょうか?」 「8時…嘘、8時!?」 この家から学校まで20分はかかる。つまりほぼ確定で遅刻ということになる…
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