7人が本棚に入れています
本棚に追加
1 平凡な朝
その町の名は真条町(しんじょうちょう)と言った。
名前だけ見るとはるか昔からある伝統を重んじる古き良き町、といった印象を受けるかもしれない。
しかし、それは名ばかりで、実態は伝統文化もなければ、観光客が大勢押し寄せて来るわけでもない。
かといって町の人口の大半がお年寄りである過疎地域でもない。要するに日本のどこにでもあるようなごく普通の町である。
そんなごく普通の町に住む一人の高校生である僕、赤月尚也(あかつき なおや)は目覚まし時計が鳴っているにも関わらず、ベッドの上でグーグーと寝息を立てていた。
いつもなら起きないといけないが、今日は朝課外が無い日なので、こうして呑気に眠っていられるのである。
あと20分くらい寝たら起きよう…
そう思っていた僕の顔に突如物凄い勢いのストレートパンチが炸裂した。
「うげぇっ」と呻き声をあげて目を覚ますと、ストレートパンチの主である母が仁王立ちで立っていた。
「あんた、いつまで寝てるの!学校に遅刻しても知らないわよ!」
「遅刻って、今は7時くらいでしょ。昨日朝課外はないって言ってたでしょ」
「確かに言ってたわね。でもそれ込みで学校が始まる時間は?」
「えっと…8時半」
「じゃあ、これ」
そう言って母さんは目覚まし時計を僕の目の前に見せてきた。その顔は悪い笑顔…嫌な予感しかしない…
「何時でしょうか?」
「8時…嘘、8時!?」
この家から学校まで20分はかかる。つまりほぼ確定で遅刻ということになる…
最初のコメントを投稿しよう!