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「何で起こしてくれなかったの!?8時半から学校始まるって知ってたのに!」
僕は身支度を済ましながら母に必死に訴えた。
「だって、あんたもう高校生でしょ。そのくらい一人でできないと苦労すると思って」
ぐうの音も出ない…だが、今はそんなことを気にしている暇は無い。
身支度を終え、はめた腕時計の時刻を見ると、指していた時刻は8時5分。
いつもに比べれば驚異的な速さだ。
これが火事場の馬鹿力と言うものだろうか。
「母さん、朝ご飯は?」
「テーブルの上の皿に食パン置いてあるから、食べながら学校行きなさい!」
創作物の女子高生じゃあるまいし…そんなことはしたくなかったが、この際仕方がない。
知り合いに見られなければ大丈夫だろう。
「いってきます!」
そう言って僕は家を飛び出し、学校に向けて走り出した。
・・・かったが、玄関前にいた二人の女子によって、そしてできれば今一番会いたくなかった二人の女子によって、先程の懸念が現実のものとなり、そのスタートは大きく失敗した。
「おはよう。遅いよ、尚也!」
「尚也さん、おはようございます」
サバサバとした挨拶をしたショートヘアのギャルっぽい印象の下田リカ(しもだりか)と丁寧な挨拶をした肩まで届くほどの長い髪のお嬢様然とした印象の天正寺美月(てんしょうじみづき)。
この二人が目に入った瞬間、食パンを口から離し、ひと呼吸おいて僕は叫んだ。
「何で二人とも僕の家の前にいるんだよ!」
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