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「ご、ごめんなさい…!我慢してください…!」
タオル越しに伝わってくる男の生暖かい血の温度、暗く静かな空間に聞こえる男の荒い息遣い。架瑠は震える右手を左手で押さえつけ、歯を食いしばった。
その時、少し遠くから怒鳴っているような声が聞こえた。耳を澄ますと、複数人の男が誰かを探しているようだ。
架瑠は先程のスマホを取り出して、着信履歴を開き、浅倉薫に電話をかけた。
「もしもし。」
「あの、すみません。もう近くにこられていますか?」
「いいえ?あと10分ほどかかります。」
「……え?」
「何かありましたか?」
少し焦ったように相手が聞く。
「えっと、まずこのスマホの持ち主の方、腹部の右側に怪我をしていて、とても血がでています。今、タオルで傷口を押さえています。」
相手が息を呑んだのが分かった。
「それで、先程から男性の方が複数人、誰かを探しているような雰囲気の声が聞こえて…」
「おい!どこだ藤堂(とうどう)!出てこいやぁ!」
すぐ近くで、男が叫んだ。慌てて後ろを向くと、公園の入口に男が1人立っている。こちらには気づいていないようだ。
「貴方の目の前で寝ているのが藤堂です。」
「え?」
先程の男の声は向こうにも聞こえていたようだった。架瑠は驚いたが、必死に声を呑み込む。
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