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「初対面、というか対面したこともないのですが、貴方にもうひとつお願いしても宜しいでしょうか?」
架瑠は少し躊躇ったが、小さく頷きながらはい、と答えた。
「藤堂を連れて、少し逃げてくれませんか?10分で構いません。お願い致します。」
そうは言われたものの、流石に自分よりも図体の大きい男を運べる自信はない。返答に迷っている架瑠の目に大きな花壇がうつった。
「申し訳ないのですが、俺にそんな力はありません。公園に大きな花壇があります。そこに男性を隠す、というのはどうでしょう?」
男たちの声はだんだん近づいてくる。
「…分かりました。貴方はその男達に絡まれないよう、近くで隠れていてください。それからその電話は貴方が持っていてください。」
相手は返答に少し迷ったようだったが、そう答えた。
「分かりました。ありがとうございます。」
そう言って電話を切ると、架瑠はズボンの右ポケットに電話をいれ、辺りを見回した。先程の男はいなくなっていて、声は聞こえるものの近くにはいないようだった。静かに息を吐いた後、架瑠は男の上半身を持ち上げた。意識のない男の体はとても重い。結果、引きずったかたちにはなってしまったが、何とか男を花壇に押し入れると、また息を吐いて立ち上がった。
今直ぐここから離れなければ。公園の入口に置きっぱなしにしておいた自転車まで走り、ハンドルに手をかけたその時だった。
「おい。」
後ろから男の声が聞こえた。
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