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恐る恐る後ろを見ると、少し離れたところにある公園の入口に立っていた男がいた。
体が強ばるが、暗くて見えないだろうと、架瑠は冷静を取り繕う。
「何ですか?」
「お前。」
男がニヤリと笑った。
「なんか知ってんな?」
思わずハンドルから手を離した。大きな音を立てて自転車が倒れ、鞄の中身が散乱する。だが架瑠にはそれに構っていられるほどの余裕がなかった。まさに蛇に睨まれた蛙。指1本動かすことが出来ない。
男がニヤニヤしながら近づいてくる。
架瑠は我に返った。逃げなければ。そう思って架瑠は男に背を向けて走り出した。吹奏楽部は文化部ではあるものの、体力が必要な部活だ。架瑠は足の速さにも体力にも自信を持っていた。だがそれは本来の力が出せたなら、の話しだ。今の架瑠に本来の力が出せるわけがない。公園を通り過ぎて少ししたところで背中に手を置かれた。
「……捕まえた。」
架瑠は激しく抵抗したが、逃げることが出来ない。男は架瑠を公園の公衆トイレまで引っ張って行くと、個室に架瑠を押し込み、自分も一緒に入ると、内側から鍵をかけた。
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