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面影を探して
あなたの姿を見た気がしたの。
ラジオから聞こえてくるのは、まるでわたしの気持ちを写したかのような歌詞の歌。涙がうっすらと瞳を潤し、どこか切なさと寂しさが胸を襲う。
窓の外を見る。
あなたがいるんじゃないかと、その面影を探して。
ドアを開け、外に出る。
あなたの面影を探しながら、前に進む。
となりにはいつもあなたがいた。
手を繋ぎ、時に言葉を交わし、視線を合わして、笑いながら。
「手錠買う?ふたりが繋がっていられるように」
なんて冗談とも本気とも思える言葉を交わし、その後どんな生活になるのかと想像しては困ったり喜んだりして。
そんな夢を見たんだよ。
少し、あなたの手の温もりが残る両手をコートのポケットに入れ、不在の中に見えるあなたの面影に語りかける。
風の中にあなたを感じ、空を見上げれば太陽や雲や星にあなたを見る。歌を聞けばあなたを思い出し、ポストカードを見かければ、あなたへ届けたいと思う。
そうして過ごす日々がいつかあなたに続く虹になればと、想いを運んでくれるという風に、その思いを託してただ、ただ祈ることしか今は出来ない自分に、歯痒さを感じながら、今すぐ駆け出すことの出来ない自分に涙が光る。
強引に吹き抜ける風が、その涙をさらって行くのは、あなたからの答えなのかと、空を見上げると、白い雲と灰色の雲が重なって走るように広がり、いつか纏いたいと思っていたストールを思い出し、あなたを捕まえるリボンにも思えてきて、あぁそうか。世界はあなたで溢れているのだと、天まで届けと空に歌う。
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