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確かな瞳に出会えたら
伝えたい言葉が浮かんでは消え、浮かんでは消える頭の中で繰り返し、あぁメモりたいと歩きながらも、メモ帳を立ち上げた時には忘れていて、素敵な物語が書けそうだったのにと、あなたの顔を思い浮かべる。
けれどその物語の始まりはどこか儚くて切ない。
あなたとの物語は、どこか儚くて切ない。掴めそうで掴めない。いそうでいて姿は見えない。面影ばかりを世界に探して、手を伸ばそうにもそこにいるのは幻想のあなた。
この思いは、恋ですか。
この思いは、幻ですか。
その気配が幸せだったこともあるけれど、あの頃のあなたを見ては胸がキュゥっと泣く。
語れるほどの確かな思い出があるわけじゃないの。
けれどどこかで消えない思いが残り香となって、胸の鼓動を思い出させる。
いつも、まるでドアの向こう側にいるようで、扉越しに触れていたようで、窓もなく、磨りガラスの窓さえもなく、ただ、ただ、誰かがそこにいたような気配を感じてた。
それがあなただったらといいのに。と、思いながら。
温かくて苦しい思いは、降り積もる雪のようにいつか溶けて川となり、桜の花を咲かせるのでしょうか。
いつか咲く桜。散り間際まで美しく、葉桜は安らぎを連れてきて、いずれその葉は地に帰り冬を越す。
いつか、あなたは、わたしはどこに辿り着くのでしょうか。
確かなあなたの瞳を見てめられる日が来たのならば、霧がかった世界の幕が開く。
その世界はきっと、扉の向こうにあるのね。と、扉の向こうを想像しながら、メモるいくつもの物語の始まり。
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