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…何してんだ俺。 我に返り、てらてらとローションを反射して光る自身に肩を落とす。すっかり通常モードになってしまった。 立ち上がり、敷いていたバスタオルでローションを拭き取る。 途中で目を開けなければ、いけたかもしれない。 だけど目を開け、清太がいないのを見てしまった。たったそれだけで、快感が吹き飛んだ。 ああ、ごめん清太。兄ちゃんひとりでいけなかったよ…。 のろのろとバスタオルを手に、部屋を出て階下の風呂場へ行く。 熱い湯を浴び、石鹸を泡立てた。 俺が自慰を覚えたのは、中学二年のときだった。 清太が友だちから借りたAVを、親のいないときに俺のパソコンで見たんだ。 生々しくて、だけどエロくて、恥ずかしいのに、目が離せなかった。 そしたら清太が、横で自身を取り出し擦りだして。 びっくりしてそれを見てたら、兄貴もやんなよって。 言われるまま、清太に教えてもらって自分のを弄った。 それからずっと、俺は清太が見てるときしか自慰をしていない。 最初の頃は清太も一緒にしていたのに、今では俺だけ。 そりゃそうだ。清太は俺とは違いかっこよくて、すごいモテるんだから。自分で処理しないでもいいんだから。 俺は清太がAVを借りてくるたび一緒に見て、自分のを弄った。清太はそんな俺を見て、色々言ってくる。 見ててやるからいけよとか、俺に見られてそんなに気持ちいいのかとか、もう一人じゃいけないだろうとか、兄貴は変態だとか…。 清太が少し意地悪そうな笑みを浮かべ、なじるみたいにかけてくる言葉に俺は興奮した。 実際、清太の言うことはいつも正しい。 俺の方が年上なのに、清太の方がなんでも知っていて、なんでも出来て、なんでも経験している。 清太は明るくてかっこいい。俺は暗くてかっこわるい。 友だちも多く、運動神経もよく、何より優しい。 俺にとっての清太は、自慢の弟。清太にとっての俺は…。 シャワーを止め、かぶりを振って浴室を出る。 なんにも出来ない、情けない兄貴。 ああ…落ち込んできた…。 「あれ、兄貴シャワー?ひとりで出来た?」
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