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脱衣場で落ち込みだした俺は、入ってきた清太にうつむいた。 清太は察したのか、俺の頭に手を置き優しく撫でてくれた。 「兄貴は俺がいないと駄目だよな。落ち込むなって、溜まったらまた俺が見ててやるから」 「…ごめん清太。ありがとう…」 情けない兄ちゃんでごめん…。 「いいって。…んで、前立腺どうだったんだ?」 「ん、けっこう気持ちよかったけど、なんか気持ち悪かった」 「なんだそれ」 笑う清太に、顔をあげて俺も笑った。 清太がそのまま服を脱ぎだしたので、遠慮なく引き締まった肉体を観賞させてもらった。 惚れ惚れしちゃう、清太の身体。 同じ物を食べているのに、どうしてこうも違うのか実に不思議だ。 そりゃ清太はちょっと前までサッカー部だったし、朝もたまに走りに行ってるのは知ってるけど。 俺も走ればいいのかな。 「あんまじっくり見んな」 うっとり見惚れていたら、苦笑いの清太に脱衣場から追い出されてしまった。 清太も家の中でくらい裸で過ごせばいいのに。 翌日、教室でひっそり新しい参考書の問題を解いていたら、会長が放課後、生徒会室集合と声をかけてきた。 「なんで?」 「全校集会の議題出たからな」 ああ、もうそんな時期か。 主に部活からの要望を質疑応答付きであしらう全校集会。 たまに一般生徒からの要望も出る。 「あの、会計関連のもらえれば、あ、明日までにまとめてくるけど…」 「たまには出ろよ。それとも、なんか用事でもあんのか?」 「ない、けど…」 なら決まりだと言い、背中を向けた会長に参考書へ視線を戻す。 早く帰って家でのんびりしたいのになあ、なんて思いながらも放課後生徒会室へ向かう。 廊下の窓から、帰宅する生徒たちが見える。 ひとりで帰って行く者や、友だちと賑やかに帰って行く者。 女の子がいないから、華やかさはないよなあと苦笑して足を止めた。 窓へ近寄り、見慣れた背中を見つめる。 清太、笑ってる。隣にいるのは友だちかな。あ、腕に触られてる。
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