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ぺたりと清太の腕に触れ、話しかけ、笑っている生徒。横にいる清太の背が高いからか、小柄に見えるその相手をじっと見る。 …清太は友だち多いから。俺とは違って存在感あるから。かっこいいし、優しいし、明るくて人気者だから。 窓から離れ、廊下を進む。ああ、早く帰りたい。家に帰れば、清太は俺のなのに。誰よりも清太に近いのは、俺なのに。 自慢の弟。俺の弟。…気安く触るなよ。気安く話しかけるなよ。 清太、俺を見て。そんな奴じゃなく、俺を見てよ。 生徒会室は教室を三等分にしたくらいの広さだ。 その中に組み立て式の長机とパイプイス、ホワイトボードと鍵付きの棚がある。 最初からあったコーヒーメーカーが、コポコポと音を出し稼働している。 「江藤もコーヒー飲む?」 ふわりと笑い、部屋に入った俺へ声をかけてきたのは書記の岩本だ。彼は威圧感がないから好き。 「うん。岩本、会長たちは?」 「会長なら副会長を捕まえに行ってるよ」 「副会長、忘れてる?」 「昼に伝えたんだけどね。忘れちゃったみたい」 朗らかに微笑む岩本から目を逸らし、パイプイスに腰掛ける。 机に置いてあった議題書を手に取り、ざっと目を通す。 鞄から筆箱を出し、赤のボールペンを手に書き込んでいく。 却下。却下。説明不足却下。検討。却下。これは…許可。 「予算表いる?はいコーヒー」 「ありがとう、覚えてるからいらな…終わった」 書類を整え、自分の前から押し出し遠ざける。 「もう?江藤ってすごいね。美人で頭がいいなんて、少しうらやましいな」 コーヒーの入った紙コップに口をつけ、岩本を見やる。 気を使わなくてもいいのに。そりゃ俺は暗くて気持ち悪いから他に言いようがないのかもしれないけど、美人て…。 「美人は、岩本だよ」 性格も顔も、岩本は美人だ。姿勢もいいし優しいし、…こんな兄だったら、清太も自慢できたんだろうな。 「ねえ江藤。前から思ってたんだけど、前髪邪魔じゃないの?短くすればいいのに」 「や、髪は清太…弟が切ってくれるから」 短くしたらたぶん怒られる。
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