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自室のドアを開け、清太の部屋の方を見る。…靴を確認した方がいいか。
足音を殺し、階下へ降りてリビングを抜ける。
階段がリビングとダイニングの間にあるのだが、清太の友だちが来てるときは本当に困る。
玄関を見ると、まだ靴はそのままそこにあった。
うーん…階段降りてきたら隠れればいいかな?
エプロンをつけ、夕飯の仕度に取りかかる。
普段と違い服を着て、階段を気にしながらの作業はなんだか疲れる。
清太、部屋で友だちと何してるんだろう。
もう夕飯出来るけど、まだ帰らないのかな。早く帰らないかな。
はあ、と息を吐き、清太の友だちに対して嫌な気持ちでいっぱいになる自分を嫌悪した。
トイレ行ってから部屋に戻ろう。友だちが帰って清太が声をかけるまで、勉強してればいいや。ここにいたってもうすることないし、ひとりで夕飯食べるなんて嫌だし。
エプロンを外し、風呂場の隣にあるトイレで用を足す。今どき一階にしかトイレないなんて…まあその分二階の部屋は広いんだけど。
トイレから出た瞬間、目の前に人がいて驚いた。
俺とあまり変わらない身長の相手は、うちの高校の制服を着ている。
相手も驚いていて、目を大きく開いてて口も半開き。たぶん俺も同じような顔してる。
…しまった清太の友だちだ!また怒られる!
慌ててうつむき、前髪が落ちてこないのに血の気が引く。
とめてる。前髪ピンでとめてるよ俺!
まずいまずい清太の友だちにこんな陰気な兄がいるって知られちゃった…あー、前髪あげるなって清太にも言われてたのにー!
「あ、の…お邪魔してます…」
驚いていたのは一瞬で、相手は小さく会釈してきた。
「あ、はあ…あ、どうも…」
慌てて会釈を返し、そのまま相手の横を通り抜け二階へ上がり自室へ逃げ込んだ。
び、びっくりした。なんか可愛い感じの子だったな。一緒に帰ってた子かな。
ドアに背中を預けたまま、ずるずるとしゃがみこむ。
…うう、あとで清太に怒られるー。あの子、俺とニアミスしたこと清太に言わなきゃいいんだけど…。
せめて前髪のピン外してれば…ああもお、俺のバカ!
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