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のろのろと勉強机まで移動し、機械的に問題を解いていく。 やだなあ、清太怒るかなあ、怒るよなあ、めったに怒らないけど注意されたばっかだからなあ…。 憂鬱な気持ちでいたら、部屋の扉をノックされた。すぐに開いた扉へ顔を向ければ、そこには清太が。 「…あいつ帰ったから。飯」 「う、うん」 うわあ、清太無表情だよ。これは怒ってる。 先に行ってしまった清太の後に続き、階下へ降りる。 ダイニングテーブルに箸を置く清太に、俺はご飯をよそう。 黙々と食事をする清太の様子をちらちらと伺う。 「あ、あの、清太」 「別に怒ってねーから」 意を決して話しかけたのに、間髪入れず返され会話が続かなくなる。 絶対怒ってるじゃん。 「…ごめん。俺が不注意だった。もっと気をつける」 悪化した憂鬱な気分に箸を置き、立ち上がる。 「や、兄貴に対して怒ってるわけじゃねーよ。…いい。洗い物俺がするから、風呂でも行けよ」 「うん…」 早く服を脱ぎたかったから、そのまま浴室へ向かった。 風呂場にたくさんのため息を落としてから出たら、リビングに清太の姿はなかった。 ようやく服も脱げていつもならリラックスタイム突入なのに、憂鬱が悪化して再びため息。 のろのろと自室へ行き、ベッドに転がった。 かっこいい清太。明るい清太。優しい清太。なんでもできる清太。 俺はいつも清太に迷惑ばっかりかけてて、きっと…きっと内心…。 じわりと湧き出る涙を落とさないよう、目を閉じ顔を覆った。 だけど清太は優しいから。こんな兄ちゃんでも見捨てないでくれている。 清太が俺のこと、もう嫌だって、こんな兄ちゃんじゃやだって見捨てたら。 きっと俺は生きていけない。 大袈裟かもしれないけど、清太は俺の大切な弟だから。大好きな弟だから。自慢の弟だから。 き、嫌われたくない…。 閉じた目から、涙が溢れて流れ落ちてしまう。 情けないよー…。俺ってばほんとに、なんて情けない兄ちゃんなんだろう。 変わりたい。 清太が友だちに紹介できるような、しっかりとした兄ちゃんに。変わりたいよ…。
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