1

18/45
前へ
/45ページ
次へ
教室に入ると会長はまだ来ていなかった。いつも俺より早いんだけど、どうしたのかな。 クラスメート相手には会長より緊張しちゃうから、笑顔の練習なんかできないし…。 黒板の上にある時計を見つめ、席を立つ。岩本来てるかな。 廊下へ出て岩本の教室へ行き中を覗き込む。岩本は廊下に近い方の席で誰かと談笑していた。 どうやって話しかけようかと、半分くらい扉から顔を出した状態でしばし悩む。 「何やってんだお前。誰かに用事か?」 すぐ横からした声に、驚いてビクついてしまった。うわわ、誰かに話しかけられた! 「あ、あの…えと、な、なんでもない、です…」 声をかけてきた相手を見れず、うつむいてボソボソと言い訳してしまう。 「そうか?」 「は、はい…」 ここは大人しく教室へ戻り会長を待とう。扉から離れようとしたら、中から岩本に呼びかけられた。 「あれ、江藤どうしたの?真壁おはよ」 「はよ。なんか、誰か探してるみたいなんだけど…知り合いか?」 そばまで来てくれた岩本に、ほんの少し安堵する。 「うん。真壁知らないの?サッカー部にいた江藤のお兄さんで、俺と同じ生徒会メンバーだよ」 「は?江藤の兄さん?うわ、似てねー」 なんだか不躾な視線を頭に感じる…。 「真壁失礼だよ。ところで江藤、どうしたの?」 「あ、の…」 どうしよう。笑顔の練習がしたいって、今言うのかなり勇気いるんだけど。 「またあとでに、する…」 なんか出鼻を挫かれっぱなしな気がするよー。 すごすごと退散しようと後ずさったら、教室から出てきた岩本に腕を掴まれた。 「放課後、生徒会室にいるから。待ってるね」 にっこり笑う岩本に、顔が熱くなる。や、優しい。用事があるのわかってくれたんだ…。 「う、うん。じゃあ放課後」 ほわほわした気持ちで岩本と別れ、自分の教室へ戻ったら会長がいた。 こくりと唾液を飲み込み、会長に近づく。 「お、おはよ」 「ああおはよ、…て江藤か。珍しいなそっちから声かけてくるなんて」
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

469人が本棚に入れています
本棚に追加