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会長の後ろの自分の席へつき、意識して口角をあげてみる。 笑顔笑顔。 「そ、そうかな」 「どうかしたか?口ひきつってるぞ」 …どうやら笑顔になっていないらしい。 机へ突っ伏し、なんでもないと呟く。 今まで意識して笑顔を作ろうなんて思わなかったからな。難しい。清太相手ならいつでも笑顔でいられるんだけど。 授業中はいつも参考書とにらめっこだったのもやめ、先生の方を見ることにしてみた。 それと一緒に、クラスメートたちも眺めてみる。 こうして見ると、けっこうな人数がいるよな。男だらけでむさ苦しいけど、それなりの進学校だからか授業態度はみんな真面目。 クラスを見回してから、こっそりあくびをする。先生には申し訳ないけど、退屈な授業に早々と飽きてしまいルーズリーフを一枚取り出した。 目標、清太の友だちとニアミスしても清太が嫌がらない兄、と…。 あと頼りすぎなのも嫌がられそうだからそこも。自立でいいか。 ルーズリーフへ書き込み満足する。がんばるぞ、おー! 放課後生徒会室へ向かう途中で、窓の向こう帰宅する清太の後ろ姿を発見する。 また横に誰かいる。 ふらふらと窓へ近寄り、額を押しつけその姿を眺める。 あれ、たぶん昨日の子だ。また清太の腕に触ってる。 正門から左へ行くと家なんだけど、清太はその子と右に曲がった。 駅に行くのかな。そんなに仲がいい子なのかな。 もやもやとした気持ちを吐き出すように、ため息をつく。 なんだか嫌な気分だな。清太は人気者だし、友だちと出かけることなんか今までもたくさんあったのに。 最近ますますブラコンに拍車がかかってる気がする。 窓から離れ、廊下を歩き出す。 ジャージ姿の生徒や鞄を持った生徒たちの間を通りすぎながら、そういや俺、中学からずっと友だちいないんだよなと思って哀しくなった。 ずっと清太がいたから寂しくなかったけど、清太が俺から離れたら、俺はひとりぼっちになっちゃうんだな。 生徒会室の扉の前でかぶりを振る。 ネガティブ思考はよくない!そうならないために変わるんだってば!
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