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「江藤は目付き悪くないけど。はい、コーヒーどうぞ」 俺の横へ来て紙コップを差し出す岩本からそれを受け取る。 「あ、前髪あげとけよなー」 乗り出していた体を元に戻し、そんなことを言う副会長に眉を下げる。 そんなこと言われても、ずっと手であげとくわけにもいかないって。 視界が薄暗くなりほんの少し緊張がとける。横に岩本が来てくれたおかげでもあるけど。 岩本ってなんか癒されるんだよな。逆に副会長はなんか怖い。 「それにしても、友だちいないって江藤に言われるとなんか悲しいな。俺は友だちだと思ってるんだけど」 紙コップを口につけたまま、思わず岩本を凝視した。 と、友だち、って言った?え、岩本、俺の友だちなの? 「つか俺も友だちじゃねーの?あんま絡みねーけど」 前方から副会長にもそんなことを言われ、固まってしまう。 うそ、友だち?生徒会メンバーってだけな気がしてたんだけど…。 「と、友だち?」 え、え、そうだったのか?じゃあ俺、俺にも友だちいるってこと? 岩本と副会長を交互に見る。二人とも笑顔で頷いている。 「友だち…」 うわ嬉しい。副会長はともかく岩本と友だちってのが嬉しい。 ああ、清太。中学からずっと友だちのいなかった兄ちゃんに、こんな素敵な友だちができたよ! これで清太が離れていっても、俺はひとりぼっちじゃない! そう喜んだ次の瞬間、ズンと気分が落ち込んだ。 違う……友だちができたら嬉しいのは本当だけど、清太が離れていったら嬉しくない。 清太がいないと嫌なんだ。 手にした紙コップを両手で包み、泣きそうになる。 「江藤、どうかした?」 岩本に横から声をかけられ、慌てて顔をあげる。 いかんいかん、ひとり落ち込んでどうする俺。 「な、なんでもない」 「そう?もしかして悩み事?珍しく江藤が教室に来たから、気になってて」 にっこり笑う岩本に、頬が熱くなる。その優しさに惚れちゃいそうです岩本大天使様。 「あ、あれは、その…笑顔の練習がしたくて…。ほら、俺暗いし、存在感ないし、その…変わりたくて」
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