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生徒会室はまだ誰も来ていないのか、鍵がかかっていた。早く来すぎたのかな。 俺は鍵を持っていないし、このまま待つしかない。会長は掃除当番だったからまだ来ないだろうし、来るとしたら岩本か副会長か。うーん、できれば岩本がいいな。 昨日、副会長も俺のこと友だちだって言ってくれたけど、ちょっと怖いし。いつもピリピリしてるっていうか、威圧感があるんだよね。ふたりっきりとかになるのは嫌だなー、なんて思っていたら副会長がやってきた。これが噂をすればってやつか。岩本早く来てー。 「お、江藤んなとこで突っ立ってどうしたんだ?」 不思議そうに首を傾げて聞いてくる副会長に、視線をさまよわせる。 「えっと、あの、鍵かかってるから…」 「鍵?ってなくしたのか?」 扉の前まで来て、鍵を差し込みそれはまずいだろうと言う副会長に慌てる。 「お、俺は鍵もらってないから。つか、使わないし」 「えー、ってまあそうか。江藤ここ来ねーもんな。さすが幻の会計だ!」 豪快に笑って生徒会室に入る副会長に続いて中へ入る。机に学生鞄を投げ、窓を開けて換気する副会長を壁際に突っ立ったまま眺めた。 顔は可愛いのに行動はおおざっぱだよな副会長。いや、でもこれくらいのほうが陰気と思われるよりよっぽどいいのかもしれない。ちょっと真似は出来ないけど。 「お、あれって江藤弟じゃね?なあなあ、あれだよな、お前の弟」 副会長の言葉に慌てて窓際に向かう。覗き込んでみると、校門へ向かっている清太の後ろ姿が見えた。 「うん、せ…弟だ」 「おー当たったー。あいつサッカー部じゃなかったか?期待の新人とか言われてた気がすっけど。部活さぼりかー?」 窓から身を乗り出し、副会長が手を振り出した。え、ちょっと副会長、何してんの!? 「おーい江藤ー!江藤弟ー!」 「わー!何してるの副会長、清太嫌がるからやめて!叫ばないで!」 副会長の声が届いたのか、清太が足を止め振り返った。しばらくきょろきょろして、まだ手を振っている副会長に気付いた。視線が副会長と俺の間を往復し、…うわわ、すっごいむっとした顔をしてる!やばい清太怒ってる!あれめちゃくちゃ不機嫌な顔だ! ざっと青ざめ、おろおろと視線をさまよわせる。どどど、どうしよう、清太怒ってる。清太に嫌われる。どうすれば、どうすれば…って副会長しつこいまだ手振ってるのやめてくれっ! 「おーい弟ー!ぶか」 「副会長ストップ叫ばないでってばー!」 身を乗り出し手を振っていた副会長の、腰に抱き着き引っ張る。帰宅途中の他の生徒もこっち見てるし、清太なんか眉間にしわが寄っているのがここからでもわかる。ああ、また今日も怒られるー。
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