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どうなんだろうと考え込んでいたら、目の前にハサミを手にした副会長がいた。うえ?いつの間に移動してきたの?
「ゴムいったん外してくんね?」
え、え、本気?うそ、困る。それは困る。まだ心の準備が。それにやっぱり清太に確認してからのほうがいい気がする。目つき悪いのが周りにばれたら、逆に友だちなんかできない気がするし。第一前髪はおろしておけって清太が…。
「ほれ早く。どのくらい切るかな。眉下あたりのがいいか」
「や、いや、それは、まま待って副会長」
じりじり詰め寄ってくる副会長から、じりじり後ずさりして逃げる。こ、怖い怖い副会長怖い。そんな可愛い顔近づけないで。ついでにハサミシャキシャキ鳴らさないで!
半泣きで視線をさまよわせる。誰か助けて。岩本、岩本、会長でもいいから誰かー!
ハサミを持っていないほうの手が、俺の前髪に伸びてくる。ぎゅっと目をつぶって身をすくませたら、生徒会室の扉がバンッとすごい音をたてて開いた。
「失礼します」
続いた低音の抑揚のない声。こ、この声は。
「清太!」
俺の天使!神の助け!でも清太のこの声音はマジ切れ寸前っぽい気がする。さっきのに怒ってわざわざ来たんだろうなあ…。
「うおお、ビビった。あ?江藤弟じゃん、どうした?」
シャキシャキハサミを鳴らしつつ尋ねる副会長。危ないからハサミはしまって欲しい。
清太は無表情でそんな副会長を見やり、それから俺を見て眉間にぐぐぐっとしわを寄せた。
怒ってるー!
「せ、清太…」
「何してるんですか、副会長さん。うちの兄を壁に追い詰めハサミなんかで脅して。それとさっきのはなんですか?あんな大声で呼ぶっていじめですか?後輩いじめが流行ってでもいるんですか?辱めたいんですか?ハサミ片したらどうですか?」
せ、清太がマジ切れしています!!それとハサミ片すのには賛成します。
「ああ?んだそのいいぐさは。別にいじめじゃねーし。江藤弟がいたから声かけただけだし。脅してもいねーし。これから江藤の前髪切るだけだし。あ、そういやなんか言ってたな。江藤、ちょうどいいから前髪どのくらい切るのか弟に相談したらどうだ?弟がどうたら言ってたよな?」
副会長ってすごいと思う。こんな怒っている清太にたいしてもものすごくなんていうか…マイペースで対応してる。俺にはまねできない。
「前髪と言えば兄貴、なんで結わいてるの?俺、何度も言わなかった?」
副会長へ向かっていた冷ややかな視線が、俺の前髪に注がれる。
「あ、ごごごめんなさい、ちょっとあの、あの、すぐ外します!」
俺的最速速度で前髪を結わいていたゴムを外して目元をかくした。
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