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うう、清太がマジ切れしてるの久しぶりに見た。なんだかんだ言って清太、俺に対して本気で怒ったことなかったから、こんな冷めた目で見られると泣きたくなる。 も、もしかして…嫌われた?もう付き合いきれないって、俺、清太に…。 「せ、清太、ごめん、怒んないで、怒んないで」 俺のこと嫌いにならないで。俺のこと見捨てないで。俺、清太に嫌われたら、どうしていいかわかんないよ。 じわじわと涙がもりあがっていく。目や顔が熱くなっていくのに、頭と身体は冷えていく。手が震えてきて、はくはくと口を動かすのに息がうまく吸えなくなる。 「おいお前、睨むんなら俺にしとけ。江藤、しゃがめ、なんかしんねーけど俺が全部悪かった」 副会長に肩を押され、そのまましゃがみこむ。頭がくらくらする。俺、どうなっちゃってんの? 「…や、すいません俺が悪いです。兄貴?怒ってないから、もう怒ってない」 清太が俺の前まで来て、一緒にしゃがみこんでくれた。頭を撫でてくれて、それから抱きしめて背中を撫でてくれる。 「おこ、怒って…」 「怒ってない、なんかちょっとイライラしてた。八つ当たりだから、兄貴は悪くない」 「き、嫌いに…」 「なんないから。あー…大丈夫、俺は兄ちゃんのこと大好きだから」 「せ、清太ぁー」 清太の背中に手を回し、ブレザーを握りしめたら涙がいっぱいでて鼻水もいっぱいでた。 「えーっと、何があったのかな?」 清太のブレザーに顔をうずめている俺の耳に、岩本の困惑したような声が届いた。それと一緒に扉の閉まる音もする。 「おー岩本。なんか俺がやらかしちまったみてー。あ、このでかいの江藤弟」 「知ってるけど。副会長が江藤泣かしたの?駄目だよ?ちゃんと謝ったの?」 「謝った。でもいまいち何が悪かったのか理解してねー。俺が江藤弟怒らせた?そんで江藤が泣いた、みたいな?」 「うーん、よくわからない説明ありがとう。コーヒーでもいれようか。あ、弟くんはそのままそのまま。少し待っててね」 んん、冷静に考えると岩本もかなりマイペースだよな。それより清太のブレザーに涙と鼻水ついちゃってる気がする。 「せ、清太」 恐る恐る清太の胸から顔をあげる。 「あー、すいませんティッシュあります?」 「あるぜー。ほれ」 清太の言葉に、副会長が箱ティッシュを投げてくれた。それをキャッチした清太が、数枚抜いて俺の顔をざっとふき取り鼻にあててくれる。た、助かる。鼻が詰まって息が苦しかったんだよね。さすがは清太だ。 チーンと鼻をかみ、すっきりしたところで次の行動に悩む。 俺の手は清太の背中側のブレザーをまだつかんでいる。そして俺はこの手を離したくない。だけどこんなところで引っ付いているのはよくない。きっと清太は勘弁してくれとあきれているはずだ。だけど離したくない。 俺が固まったまま、どうしようと悩んでいたら、清太はブレザーの前ボタンを外し少し離せと言ってきた。 うつむいて、俺は手を離した。
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