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「ちょっと兄貴、まじめな話ここの生徒会大丈夫なのか?」 え、それを俺に聞かれても困る。一応俺も生徒会メンバーだし岩本は天使だから大丈夫だと思うけど、副会長と会長は大丈夫じゃない気がする。けどそんなこと言ったら副会長が怒りそうだ。 「真壁もよく似たようなこと聞いてくるなあ。あ、弟くん、真壁が戻ってきてほしいって言ってたよ?」 「真壁先輩が?と、ありがとうございます。兄貴、コーヒー」 かぶったブレザーの間から、紙コップに入ったコーヒーを受け取る。清太優しい。岩本も優しい。 ズズズと音を鳴らしてコーヒーをすする。 「で、けっきょくなんの騒ぎだったの?」 岩本の質問に何があったかを思い返す。えっと、副会長が清太に大声で呼びかけて、俺の前髪切ろうとして、清太が来て、清太に怒られて、怖かったなー。で、俺が泣いちゃって、清太が優しくしてくれてる。つまり、 「副会長が怖かった」 っていう結論に達するわけだ。 「えっ、俺か?俺のせいか?えー、そうなのか?」 「まあそうですね。副会長さんが窓から身を乗り出して大声あげてて、うちの兄貴に抱き着かれてて、俺がここ来たときにはハサミ片手に兄貴を壁に追い詰めてましたから」 「うわあ、江藤怖かったね。副会長は会長に叱ってもらうからね」 それって会長にとってはご褒美的な何かな気がする。いつも朝ご機嫌なのは副会長に痴漢してるからで、たまにあいつの声がとか真っ赤になってとか聞いてもいないのに話してくるときがあるからわかる。副会長的にはどうなのかな。 「あの、副会長って、いつも会長に痴漢されてて嫌じゃないの?」 「嫌に決まってるだろがっ!」 「またまたー。俺は教室のほうがいいけど、副会長は電車がいいんだよね?」 岩本の言葉に考える。 痴漢電車シリーズはあんまりおもしろくなかったけど、たくさん出てるから需要があるんだろうな。つまり会長と副会長は楽しいのだろう。それって叱ってもらうことになるのかな。いや、清太がもう怒っていないなら問題はないんだけどさ。 できればハサミ持って前髪切ろうと迫ってこないでくれるとありがたい。 「兄貴、帰ろう。ここにいると兄貴に悪い影響が出る気がする」 「そ、そうなの?清太、一緒に帰ってくれるの?」 高校に入ってから初めての一緒に帰宅!?何それすごく嬉しいんだけど! 「ああ、ここに置いてくよりその方がいい。立てる?」 「うん。あ、清太ブレザー」 まだかぶっていたいけど、ブレザーを清太に渡して立ち上がる。 「ん。それじゃ、失礼します」 「あ、うん。江藤また明日ね。弟くんもまたね」 手を振る岩本に振り返そうとしたが、清太に肩を抱かれて連れ出されてしまった。まだ少し不機嫌なのかもしれない。帰ったらもう一度ちゃんと謝ろう。
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