1

34/45
前へ
/45ページ
次へ
学校で清太に会えないから、毎日走って帰宅していた記憶しかない。ランドセルを背負う清太が可愛くて可愛くて。背も伸び始めた時期だったから、日に日に違和感が増していく清太のランドセル姿は、もう絶品だった。 「泣いてたよ、んでさっきみたいに呼吸困難で真っ赤な顔してたじゃん」 それは走ってたからと、清太が可愛かったからじゃないのかな。 「学校でみんなに小突かれるとか、撫で繰り回されるとか、母さんに相談したろ?」 「あ、覚えてる。女の子に撫で繰り回されるのすごい嫌だった。やめてって言っても聞いてくれないの。男子にはよく小突かれてた気がする」 「んで俺は母さんに相談されて、原因なんて兄貴の顔だろって思ったから、前髪伸ばせって言ったんだよ」 ああ、やっぱり俺の目つきが原因だったのか。 ぐりぐりと撫でる清太の手に合わせ、身体が揺れる。 「兄貴とニアミスしたやつら、みんな兄貴の部屋に突撃しようとするから困るんだよ。俺の彼女とか、兄貴に会うと次から兄貴の話ばっかになるし」 そ、そんなに嫌われているの俺は。 「ご、ごめんなさい…」 「いやいいけど。…わかってる?」 「うん…俺が根暗で陰気臭くて、清太の兄ちゃんらしくないから…ごめんなさい」 清太の手が俺の頭から離れたので、申し訳ないと思いつつもその手を視線で追った。もっと撫でて欲しいけど、その手は清太のこめかみに置かれてしまった。 「わかってねー…マジかー…」 天を仰ぐ清太に、俺はそんなことはないと意気込む。 「わかってるよ!だから清太の迷惑にならないよう部屋から出ない!」 「ちげーっての。兄貴は俺と違って無性別な美形なの!女も男もほいほい寄ってくんだよ、んで兄貴は勢いに負けるからいい玩具になっちまうの!だから危険なのわかるか!?」 「わか、え?わかんなかった。俺男だよ?それに教室で誰も話しかけてくれないよ?」 清太の言っている言葉が理解不能だ。ほいほい避けられてるよ。無性別なんて性別はないよ。 「うあーなんだこれ。気づかんかったわー、いつからこじらせたんだよー、マジかー、俺のせいかよもしかして…どうすんだこの人無自覚かよ…」 「な、なんだよ。ちゃんと説明してくれないとわからないよ清太。俺どうすればいいの?清太に嫌われたくないよ、清太がいなくなっちゃったら死んじゃうよ」 「いやいなくなんないし嫌わないから。なんでそんなこと思うわけ?」 額から手を離し、俺を見て首を傾げる清太にむっつりふくれる。 「だって清太が言ったんじゃん。ひとりでいけるようになれって」 「言ってねーし」 「言ったじゃん!初体験ついてきてくれないって、見ててくれないって!前立腺いじればひとりでいけるってすすめたの清太だろ!」 「当たり前だろ?なんで兄貴が他人とやってんの見なきゃなんねーんだよ。前立腺は…まあ先々のこと考えてだな」 「俺だって先々のこと考えてがんばってる」 「いやな、だからっておもちゃはねーだろおもちゃは。あれはぜってー反対。今後おもちゃ使ったら兄貴と絶交すっから」
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

469人が本棚に入れています
本棚に追加