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絶交って…。 また涙が盛り上がってきて、視線をさまよわせた。絶交、清太と絶交…。 「おもちゃ使わなきゃいいんだから!泣くことじゃないぞ兄貴、泣くな、泣くなよー」 「な、泣かない」 ぐっと目に力を入れて、涙が落ちないよう気をつける。 「よしよし。んじゃいちから確認しよう。な?どうも話がうまく通じてない気がするし」 また頭を撫でてくれた清太が、反対の手で俺の手を握ってくれた。 「まず、兄貴は絶対恋人は作れない。これは理解してるな?」 ひ、ひどい清太…。 「んな絶望的な顔すんな、事実なんだから。たとえ兄貴の裸族をよしとするにしても、隠すにしても、エッチに俺がついてきたらアウトだ。わかるな?」 うう、わかります。AVによくあるさんぴーに理解ある人でないと駄目だろう。付き合うときに確認するなんてハードル高すぎる。 「それから、兄貴はもうひとりじゃいけない。これはたぶん刷り込みのせいだ。俺が毎回見てたからな。兄貴は、オナニーと俺がひとくくりになってる」 「ん、それはわかる」 「一生射精しないってんなら、兄貴は俺と一緒にいなくても生きていける」 「それは無理だよ!射精抜きにしても清太がいないなんて無理だよ!」 ぎゅっと握っている手に力が入る。清太もぎゅっと力を入れてくれて嬉しいんだけど、少し痛い。 「そうだな。兄貴は俺のこと大好きだかんな」 こくこくうなづく俺に、清太はにっこり笑う。 「となると、俺たちはずうっと一緒にいるわけだ。今までも、これからも、ずうううっと。それこそ死ぬまでな」 清太のその言葉と笑顔に、ぱあっと世界が広がる気がした。死ぬまでずうううっと、清太と一緒。それは嬉しい。そうなればいい。そんな幸せなことはない。清太と一緒。清太と一緒。 「よしよし。んで俺としては、今後兄貴と一緒にいるならクリアしなきゃなんねーことがある。いいか?これは兄貴の協力が大前提なんだ。よく聞けよ?」 うんうんと身を乗り出す。 「今はいいけど、年齢上がったら恋人ごっこってのは厳しいと思うんだ。けど俺が結婚とかしたら、兄貴はひとりぼっちになっちまう」 うなづきながら悲しくなる。 「それを回避するには、俺が恋人を作らなきゃいい。んで、兄貴の協力がここで必要になるんだ」 「何々、俺は何をすればいい?」 「兄貴が俺の恋人になれば、万事解決だ」 せ、清太…。そんな真面目な顔でなんてことを。 「清太。俺たち兄弟だから恋人にはなれないよ。そんなことは俺だって知っているよ?もっと他に一緒にいられる方法ないの?」 「だと思ったぜ!」 突然頭を抱えて土下座状態になる清太に困ってしまう。 「清太?大丈夫?」 「おー…大丈夫、大丈夫、もっといい方法考えっから…ああ、くっそ変なとこ常識ぶりやがってちくしょー」 「清太?」 「はー、まあいいや。んじゃ兄貴。復唱してください」 姿勢を正した清太に、俺も姿勢を正す。 「オナニーにおもちゃは使わない。人前で前髪をあげない。生徒会には近寄らない」 「…む、難しいかもなんだけど。ひとりでいけないままになっちゃうよ?」 「それはいいって、俺が面倒みるから。前立腺気になるなら協力する。すすめたの俺だしな」 それなら、大丈夫、かな? 「わかった。おもちゃ使わない。前髪あげない。生徒会室近寄らない」 「よし。じゃあ買い物行こ、下で待ってるから早くしろよ」 「うん!清太と買い物、久しぶりで嬉しい」
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