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気がつけば朝で、あっという間の学校。教室でおとなしく座っている俺に、会長がさっきから聞いてもいないことをにやにやにまにました顔で話している。 副会長が痴漢されてどんな声を出してとか、涙目でとか、腰抜かしてたなんて情報は俺には必要ないんだけどな。 うるさいから黙ってほしいんだけど、そんなことは言えないので右から左へと聞き流してすごした。 授業が終わったらまっすぐ帰り、シャワーをして裸のまま掃除をする。掃除が終わったらまたシャワー。夕飯は昨日のカレーがあるからと自室で勉強。 はあー、やっぱり無理していたのかも。変わろう変わろうと最近慣れないことばかりしていたから、いつものルーチンに入れて気分も身体も軽い。 夕飯は清太と食べて、そのあとはリビングで清太と少し話して、風呂に行く清太の背中を名残惜しくも見送り自室へ戻り勉強、それから睡眠。 翌日の学校、教室前の廊下に岩本がいた。 「岩本、おはよう」 「おはよう江藤、昨日来なかったからどうしたのかなって思って」 あ。忘れてた。鞄を持ったまま岩本と廊下の壁に背中をあずけて、事情を説明する。 「ああ、弟くんかー。江藤は弟くん大好きなんだね」 「うん。清太に捨てられたくなくて、がんばろうと思ったんだけど、生徒会室は駄目なんだって。それに、清太が俺のこと嫌いにならないって、一緒にいるって言ってくれたから、笑顔の練習もしないでいいし」 にこにこと笑っている岩本を横目で見て、頭をさげる。 「ごめん、せっかく手伝ってくれるって言ってくれたのに」 「いいよ、気にしないで。って、ふふ」 岩本は笑いをにじませて小首を傾げた。 「なんだかすれ違った恋人同士が元さやに納まった感じだね。弟くんに捨てられないで、よかったね」 岩本の天使の微笑みに、俺も顔がゆるんでいく。 「うん、ありがとう。でも清太と俺は兄弟だから、恋人じゃないよ?」 「それもそうだね。じゃあ恋人以上に仲がいいのかな。俺もそんなふうになりたいな」 「うーん、どうなんだろう。清太に恋人ができるとちょっとつまらないけどね。恋人かー…俺も彼女欲しいけど、無理かなー」 岩本は恋人いるんだもんな。会長は副会長ラブだし。みんないいなあ、俺の恋人はAVと自分の手か。 「あ、あとおもちゃ使うのはダメだって言われたんだ。オナニーのバリエーション増やしたかったけど、アナニーは棚上げかな」 自分の指いれるのやっぱり嫌だしうんちだし。 「そうなの?俺も最初はなんか嫌だったけど、今はいれてもらわないといけないよ。ひとりでするより全然気持ちいいもの」 「そうなんだー。でも俺はひとりでやらなきゃだから、やっぱり無理かなー」 「手伝ってもらいなよ、ほんとにすっごい気持ちいいから」 「んー、そういえば手伝ってくれるって言ってたような…」 「じゃあもし試して気持ちよかったらまた話そうね。他の人がどんなふうにしてるのか、俺も興味があるから」 にっこり笑顔を残し、岩本はまたねと言って帰って行った。 教室へ入り自分の席に着くと、会長がくるりと振り返った。岩本とずいぶん仲良くなったんだなと言われ、そういえば普通に話せていたなと気づく。あれ、もしかして俺、少しは成長したのだろうか。そうだったら嬉しいけど、会長は前を向けばいいと思う。もう副会長の話はお腹いっぱいです。
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