攻めが恥ずかしい目に遭う座談会(抜粋)

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 話し始めたのは、綾斗が先だった。 「こっちの世界では、アルファっていうのは強い人なんです。中でも重春さんは強いアルファで、特殊な力も使えるぐらいで」 「あ、電車で……うん、見た、その力」  雨宮が相づちを打つ。 「アルファとオメガなら、アルファが支配する側で、オメガが支配される側。つがいでも、そういう関係になりやすいんです。虐待とかじゃなくて、オメガの方も、そういう支配を疑問なく受け入れちゃう素地があるというか。 でも、重春さんは全然、違うんです。そうならないように、意識して対等に接してくれるというか、僕をすごく尊重してくれるんです。オメガなんだからこうだって決めつけないで、僕という人間を、ちゃんと、見てくれるんです」  綾斗が一生懸命しゃべっている。その隣で九条がちろっと綾斗の方を見ている。一瞬、九条が復活したかに見えたのだが……。 「だから、僕がかわいい九条さんを見られなくなって意気消沈してた時に、手錠させてほしいって頼んだら、両手を差し出して手錠させてくれて、すごく嬉しかったんです! それでっ、その後、こんにゃくプレイしたんですけど、超絶かわいかったです!! 重春さん、こんにゃく使うやり方知らなくて、こんにゃくに包まれて悶える姿が、もう、すごいピュアでした!!」  途中まではいい話だったのにな……と遠い目で思う。視界の隅では、再びマリアナ海溝の深淵まで沈没した九条が頭を抱えてぶるぶると震えている。  気の毒すぎる。生きろ。
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