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バレンタインにはチョコレートケーキを焼いた。
「ありがとう!!すげえ嬉しい!めっちゃ旨そう♪」
バレンタイン当日は仕事で会えない。だからバレンタイン前の土曜日に渡した。
秀一は午前中は仕事だから、その間に焼いた。
昼過ぎ、秀一が来て遅めの昼食を食べ、それから渡した………ら、凄く喜んでくれて……恥ずかしかったけど、僕まで嬉しくなった。
「俺のために作ってくれたんだよな?あー!嬉しすぎる!!食いたい!でも大事に取っておきたい!あ、先に写真撮っておこ♪」
そんなに喜んでくれて作った甲斐があったんだけど………だんだん恥ずかしくて……若干、呆れ気味……。
「あの、秀一?食べて欲しいから、切ろっか?」
「え?そうだな。食べて欲しいから作ったんだもんな。……でももうちょい待って」
そう言って大して変わらないアングルで写真を撮って 保存して、それをニヤニヤしながら見てる秀一………。
……………秀…………僕、だんだん不安になってきちゃう…………。
ケーキをカットして生クリームを添えて秀一の前に置いた。
カシャ………カシャ………カシャカシャッ……………………………………………………………………
「秀! た・べ・て!!」
はいぃっ! って。ふふふ。面白い。楽しい。
「いただきます!……んっ!……んめええぇぇぇ♪」
「本当?……よかったあ」
「甘すぎないからいくらでも食べれそう!生クリームも甘すぎなくてめっちゃ旨い!!」
よかったと胸を撫で下ろす。
一応 試しに作って食べて味は悪くなかった。でも、好きな人に食べて貰うと思うと……やっぱり不安だった。
嬉しそうにして 旨い って食べてくれる。
それが 嬉しくて自然に顔が綻んで……幸せな気持ちになる。
「琉生は凄いなあ。ごはんが作れて、おまけにケーキまで作れるって。俺、尊敬する」
「大袈裟だなあ。そんなことないよ」
「そんなことある!俺には出来ないことだ」
嬉しい。
僕の数少ない出来ること…。
母さんに 教わったこと……。
「……ありがとう」
「『ありがとう』は俺だろ。琉生、ありがとう」
旨い! ってまたケーキを食べ始める。
僕は秀一の嬉しそうな顔を見ながらコーヒーを飲む。
「琉生も食えよ」
「いいの?」
「当たり前だ。琉生が作ったんだろ。俺が貰ったケーキ、俺は琉生と食べたいんだ」
うん! と頷いて、自分の分と秀一のおかわり分をケーキと生クリームをお皿に乗せた。
自分で作ったんだけど、ふたりで食べるのが嬉しくて…楽しくて……凄く美味しく感じた。
幸せな毎日が続いた。
週末は一緒に過ごしてごはんを食べ、のんびり過ごしたり買い物に行ったり。時には身体を繋げたりした。
そして、春山と茜さんの結婚式の日が来た。
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