魔王だってニヤニヤする

1/5
前へ
/5ページ
次へ
 魔王の城は森の中央にあって、まぁ城を中心に森が広がっているんだろうけど、城の周りの枯れていた木も魔力の増加で葉が生い茂っている。つまりは森は森として機能してるってことだ。  魔物は魔力を感知できるのか、城の周りに多くいて、魔王ガルデリカの魔力を欲しがる。もちろんそれは『奪う』というものじゃなくておこぼれを貰うといった、特に特筆するような性質の生き物じゃない。  魔物は魔族を襲わないし、魔族は魔物を狩る。それが自然の摂理だ。  強い者に従って弱い者は淘汰される。  でも中には弱い者を使役する事で護り弱い者も強い者に庇護される形で生きる事を許されたりする。  それもまた自然の摂理だ。  傍迷惑な音を立てて現れた来訪者は、今の現状を考えればもちろん歓迎できるものじゃない。だって勇者でしかないじゃん。  だから俺は居留守を使う事にしてシカトしようとしたのに、どこから現れたのか『特級』の六人が俺を囲む。  さらに今の今までかくれんぼ中だったガルまでも現れて後ろから俺を抱え込む。  今まさにおれが自然の摂理に則った形で守ってもらってる。頼んでないけど。  いや守ってもらわなきゃ困るよ?だって激弱だし。  誰かが迎え入れる訳もなく、そのまま帰ってくれるのを期待していた。息を詰めて。  このままだと死んでしまう。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加