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 瞬間、電撃が走った。  嫌な思い出がまざまざとよみがえる。  私の実家はド田舎で、通える範囲の小中は一つだけ。高校も片手で数えられるほどしかない。電車もバスもない場所だから、すごく閉鎖的(へいさてき)だった。  だから仕方なかったなどと納得してはいないが。    この地域ではいじめがある。  教師から生徒への。あからさまないじめが。  その一つが理科の実験だ。  一度失敗すると、わざと放課後残らされてもう一度始めからやらされる。授業中にする時間が十二分にあるのにだ。  他の授業もこんなかんじで、なかには手が出る強烈(きょうれつ)な教師もいた。  そんなだから、少しずつ生徒の方も性根(しょうね)がひん曲がって、誰かに八つ当たりをする。された側は別の誰かに……また別のやつが―――  と争いが絶えなかった。  これは、当時私が着ていた白衣だ。まちがいない。  しわくちゃのままの白衣を、捨てる方のごみ袋へ乱暴に入れた。  ずっと長いこと忘れていたんだから、次はもう思い出さないだろう。  私は自分が案外忘れっぽいことに感謝しながら、ごみ袋をしばった。 「みーさん、それ捨てるの?」
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