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猫と鍋と私の食品温度計
ある冬の出来事。
とても寒い日が続いた。
私の家は古い造りで、すきま風が四方八方からおかまいなしにやってくる。うちの家族はエアコンの風が嫌いで、リビングのこたつしか暖房器具はなかった。
たまにだが、冬の寒くて疲れきった夜は、一人くらいこたつで朝まで寝ていることがある。
それが数日続いたとなれば、当然がら空きの布団がでてくるわけで。また、同じ人が連日こたつで寝るのも悪かった。
我が家には猫がいる。黒と灰色と鯖模様と黒ぶちの大人猫が四匹だ。仲が良くないくせに、冬は寒いから全員でくっついて寝ている。
この時期はこたつが彼らのベッドになるのだが、人間に占拠され追い出されてしまっていた。
けれど彼らは運がいい。非常に。
なにせ代わりに、羽毛のシーツが敷かれた低反発ウォーターベッドが空いているんだから。そう、こたつを独り占めする、私の姉の、ね。
私も、彼らを止めることはしない。これは自然の摂理だ。
最初は、この一回だけだと思っていた。それが、二日、三日、四日……と姉がこたつで寝る日が続いてしまい、とうとう猫たちがこたつに見向きもしなくなった!
なんて適応力、柔軟性だろう。
黒にいたってはご飯を終えたら一目散にベッドに行き、場所取りまでしている。黒はなかなかに狂暴で、大の男にも牙をむく。メスとは思えないほど体も大きいから、姉では追いはらえない。
もちろん私は手をかさない。私は黒に甘いのだ。人間どころか飼い主(母)にも媚びない、あの強く図太くたくましいところが気に入っている。尊敬しているといってもいい。
ああ、ここは黒たちの寝床になった!夏場でも冷感シーツに取りかえれば、彼らはずっと来るかもしれない。そうなったら、 姉には冬以降もリビングで寝てもらおう。
実はというと、二晩目から、私もこのベッドで寝ている。わずか一メートルもない隅のほうで、丸まってだ。窮屈だけれど、それ以上に充実感がある。
私は家族のなかで一番の猫好きだ。毎朝、自分の顔を彼らの座布団がわりに使ってもらっている。それくらいには、猫好きだ。
なのになぜ自分のベッドを献上しないのか? かなり前に試したが、自分のおさがりのせんべい布団じゃ、猫たちはクッションの代わりにもしてくれなかった。私が横になっていれば、顔には乗ってきてくれるが。流石に呼吸がつらかったので諦めた。
だから正直いうと、姉のベッドはけっこう前から狙っていた。
さあ、今夜もこの幸せを噛みしめねば。ベッドの中央にできた四つのニャンモナイトをじっとりと撫でまわす。手が疲れたので次は頬で。人に手がなければきっとこうやって毛繕いをしたに違いない。
しばらくすると、黒が尻尾をビタンビタンとはねさせてくるので、最後にひと撫でしておしまいにした。
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