彼らの話

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彼らの話

「なぁなぁ!お前らの学校ってあの人居るんだろ?!」 「名前を言ってはいけない闇の魔法使い?」 「ちっげーよ藤倉くん!確かに闇の魔法使い感は否めないけど」 「あぁ、まぁ…。そうかなぁ?」 最近はもっぱらコレ。 中学の頃の友達と会うと大体この話題。 まぁそりゃ気になるよね、有名人だもん。 俺も逆の立場だったら、きっとこんな風に質問攻めにしてたかもなぁ。 「で?どうなの本物は!やっぱカッコい?」 「まぁね。ファンクラブもまた出来てるよ」 「だろうなぁ。ってか、オレの友達があわよくば藤倉くんの連絡先知りたいって言ってんだけどぉ…。聞けたりしない?」 「うーん…。聞けなくは…ないと思うけど。無駄だと思うよ」 「マジでッ!話せるの?!」 「いやまぁ、話せはするけど」 挨拶くらいならまぁ、返してくれるとは思うけど。あいつが側にいればね。 「中学の頃みたく刺々した感じじゃねぇの?誰も寄せ付けない的なあのオーラは無くなったワケ?」 「いやぁ、まぁそれは…うん。まぁね」 学校での彼を思い返して、それから中学の頃の彼も交互に思い出してみる。ずっと見てれば成る程なぁっていう変化なんだけど、何も事情を知らない側からしてみたら信じられない変化だろうな。 確かに中学の頃よりかは遥かに話し掛け易くなったし、聞こうと思えば俺の友達経由で連絡先も手に入るかもしんない。 けどその後の事を考えるとやっぱり怖いので出来るだけ彼の機嫌を損ねる事態は避けたい。マジで。 いくら雰囲気が柔らかくなったからと言っても、出る時には出ちゃうんだ。本性?ってやつ。怒らせたくないよ。 それに彼が怒ることがあるとすれば間違いなくあいつ絡みじゃん?藤倉くんを怒らせたらどうなるかなんて考えたくもないし。 それに俺自身としても、大事な友達をそんな道具みたいに使いたくない。 あいつ無自覚だし、なのに優しいから他人の為に動いてその所為でまた傷付いちゃうかもだし。 そんなの絶対絶対ぜーったいやだもん。 それに学校では周知の事実だけど、藤倉くんに好意を持って近寄ろうとしても無駄だと思う。ファンクラブが邪魔するからじゃなくってね。まぁそれもなくはないんだけど、何より藤倉くん本人があいつ以外に一切の関心が無いからなんだよね。 これもいつも見てれば分かることなんだけど。 「なぁー!何とかならない?」 かと言って何も知らない目の前の友達は一向に諦めてくれそうにない。寧ろ目をキラキラさせて、高校での藤倉くんに興味津々といった感じだ。 「悪いけど諦めてって友達に言っといて。聞いても無理だよ」 「でも話せるようになったんだろー?信じらんないけど」 「そうだよねぇ。中学の彼知ってたら信じらんないよねー」 「いいなぁ、オレも見てみたい!ヤンキーじゃなくなった藤倉くん!」 あ、不良やめたっていう噂はあるのか。確かにケンカはしなくなったらしいし、今じゃあ寧ろ成績トップの優等生だよ。 「マジで想像つかねーわぁ。笑った顔とか見たことある?」 「あるよ」 場所は限られるけど。あいつの隣オンリーで。 「マジでッ!!」 衝撃の情報に友達はこれでもかと目を見開いて、ガタンと身を乗り出した。ちょっとファミレス中の注目集めちゃってるよ。 店内ではお静かに。 ま、でも。俺らの学校に来ればもっと信じ難い光景が日常的に見られるよ。なんてね。 二人の邪魔したくないから言ーわない。 「ふ、あっはは!」 「何笑ってんの?」 「いやぁ?人って変わるもんだなって」 「藤倉くんの話?」 「うんまぁ、それもあるけど」 藤倉くんとよく居る俺の友達の話でもあるかな。あいつ、自分では全然分かってないみたいだけど毎日すげぇ楽しそう。 元々優しくて友達の多い奴だったけど、藤倉くんと仲良くなってから色んな表情が増えた気がする。 心配させるのが嫌だからなのか、他人に弱ってるところなんて中々見せなかったあいつが机に突っ伏してあからさまに凹んでる貴重な一面も見れたし。 人に頼るってこと、ちょっとは覚えてくれたかな。そうならいいなぁ。 あの二人って全然違うようでいて実はよく似てる。 澤と出会ってから藤倉くんが変わったのは言うまでもないことだけど、澤だって藤倉くんと居て表情が豊かになった。まだもうちょっとかかりそうだけど、少しずつ俺らにも弱音を吐いてくれるようになった。 まぁ余りにも鈍過ぎてたまに藤倉くんが可哀想に思えることもあるけどな。 だけど、そんな二人を見守るのはもどかしくて面白い。たまにハラハラさせられる時もあるけど、二人が並んで話してるの見るだけで近所のポメラニアン撫でてる時と同じくらいほわほわするし癒される。 さてさて!ポメで俺が誰だかバレちゃったかな? イエス!澤のクラスメイトだよ! ま、俺のことはいいとして。 「だから何で笑ってんのさぁ?」 「ゴメンゴメン。学校楽しいなってさ」 「そんなにぃ?やっぱ藤倉くん関係ある?」 「まぁ、なくはないかな」 ウソ。大いにあるけどね! これ以上彼らのギャラリーが増えたら大変だから、今はこれくらいで濁しておこう。
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