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最先端のごみ箱
<語り>
これは馬鹿なK博士の話だ。
彼は長年の研究の末に「最先端のごみ箱」を完成させた。
<博士>
やっと長年の研究の成果が出た。
私以外の誰もこの偉業について知らないことを思うと、もどかしい。
だがこれが世界に認められれば、私はこんな生活から抜け出せる。億万長者になれる。
誰にも設計図をとられないように金庫に入れておこう。「20201205」自分の誕生日を鍵にしよう。
<語り>
彼は早くみんなに自慢したいと考えている。それもそのはず、これほどの革命的な発明は過去になく、未来にもないと思う。
さて、私が簡潔に機能を説明しよう。
このごみ箱は''記憶''を捨てることができる。
まずは接続されている機械を頭に取り付ける。すると頭の中で今までの全ての記憶が、分割された画面で出てくる。その中から捨てたい記憶を選択して削除すれば、その記憶は綺麗に頭から消える。
説明は簡単だがこれを作ろうと思うと気が遠くなるだろう。
<博士>
さぁまずは私がやってみよう。多分上手くいくはずだが・・・。
おぉ、本当に全ての記憶が出てきたな。そうだな、どれを消そうか・・・。
決めたぞ、愛犬が死んでしまった記憶を消してみよう。
<語り>
こうして、K博士の頭の中から愛犬が死んだ記憶が無くなった。
<博士>
次は何を消そうか、さっきは何を消したかな。まぁ、思い出せるはずがないが・・・。
そうだ、次は昨年の事故の記憶を消そう。
あれは思い出しただけでも体に痛みが走るからな。
<語り>
K博士の頭の中から交通事故の記憶が無くなった。夢中になった博士は多くの記憶を消してしまった。
<博士>
よし、最後は苦労した日々の記憶を消そう。
これで気持ちが晴れるはずだ。そして、嫌な記憶はこれで全て消える。
これが終われば世界中にこの発明を公開し、私は億万長者になるのだ。
<語り>
こうして博士の頭の中から研究の日々の記憶が無くなった。
<博士>
この大きな箱は何だろうか。
さっきまで自分の部屋で考え事をしていたのだが、この研究所は何だ。なぜこんな場所にいるのだ・・・。思い出せん。
この箱の説明書があるではないか・・・。
なるほど、使ってみるか。
これはすごいな。誰が作ったかは知らんが、設計図はどこだろうか。
どこにもないようだな・・・。
まぁ良い。こんなに素晴らしいものを手にしたのだから独り占めするほかないだろう。
世界で私だけしか知らないと思われる、この
「最先端のごみ箱」を。
<語り>
博士が億万長者になる夢は儚く散った。
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